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【研究成果】がんと周辺細胞の変化を可視化・定量化できる3次元in vitroがんモデル~がん悪性化を抑える薬剤のスクリーニングへの応用に期待~

本研究成果のポイント

  • がん周辺に存在する正常な細胞が、がん細胞の影響でがん組織に適応した状態へ変化していく過程を、3次元in vitro (※1) 培養システムとイメージング技術を組み合わせて可視化
  • 周辺の細胞ががん様に変化することで、がん細胞自身の成長や浸潤 (※2) が活発化する様子も観察
  • 発がん物質によってがん化が促進したり、薬剤によって抑制されることを画像解析から定量的に評価可能

概要

 広島大学大学院統合生命科学研究科基礎生物学プログラムの菊池裕教授、高橋治子助教らの研究グループは、がん細胞と周辺の線維芽細胞との相互作用により、がん組織内で見られるがん関連線維芽細胞 (※3) への変化と、がん細胞の増殖や浸潤を観察可能な3次元in vitroがん―間質 (※4) 培養ディスクを開発しました。培養した細胞のイメージングにより、線維芽細胞とがん細胞の微量な変化を定量化し、変化の過程を生きたまま観察することに成功しました。さらに、発がん物質や薬剤を添加し、これらの効果を調べることも可能でした。本システムを用いることで、がん細胞と線維芽細胞以外の種々の細胞との関係の検討や、薬剤スクリーニング基盤への応用が期待されます。

本研究成果は、Biomaterials Science誌(オンライン版)に5月11日に掲載されました。

図1 イメージ図

用語解説

(注1)in vitro:生体外で、培養器内で
(注2)浸潤: がんなどの細胞が動いて他の臓器へ広がること。その結果、転移が起こる。
(注3)がん関連線維芽細胞: がん組織内部で、がんに適応した線維芽細胞。がん細胞の増殖・成長や、浸潤・転移を促す因子を放出してがん化を助ける。
(注4)間質:上皮細胞などで構成される組織や臓器の細胞を支え、組織の結合や構造を維持する役割を持つ。線維芽細胞は主な間質細胞の1つである。

論文情報

  • 掲載誌: Biomaterials Science
  • 論文タイトル: 3D in vitro co-culture disc for spatiotemporal image analysis of cancer–stromal cell interaction
  • 著者名: Haruko Takahashi and Yutaka Kikuchi
  • DOI: https://doi.org/10.1039/d1bm00629k
【お問い合わせ先】

大学院統合生命科学研究科基礎生物学プログラム
助教 高橋 治子
Tel:082-424-7441
E-mail:harukot*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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