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【研究成果】「リンパ管奇形に対する越婢加朮湯の効果を評価する臨床研究」の臨床試験(医師主導の特定臨床研究)を開始しました

本研究成果のポイント

  • 小児や新生児に著しい合併症を引き起こすリンパ管奇形「LM(Lymphatic Malformation)」(※1)に対して広島大学病院漢方診療センターの小川恵子センター長らのグループはLM症例における漢方薬の越婢加朮湯(エッピカジュツトウ)(※2)による病変縮小効果を報告しました。同様の腫瘍縮小効果はほかでも報告されています。
  • 今までにこの効果を評価した臨床研究は行われていなかったため、本院漢方診療センターでは越婢加朮湯の臨床試験を開始しました。20例のLM患者に6カ月間投与し、有効性、安全性を評価します。
  • 最近シロリムスという薬剤が難治性LMに対して承認されましたが、血小板減少症などの深刻な副作用があり、薬価も高価です。より安価で副作用の少ない漢方薬による治療が期待されます。

概要

 20例のLM患者に越婢加朮湯を6カ月間投与し、投与開始前と6カ月後の腫瘍の体積やその他設定した評価項目を比較することでLMに対する越婢加朮湯投与の有効性とその用量反応性、安全性を評価します。LMに対する越婢加朮湯投与の効果を正確に評価するため、試験開始後6カ月間は、硬化療法(※3)、外科的切除、シロリムス、ラパロリムス等のmTOR阻害薬(※4)の併用はいたしません。

図 縦隔リンパ管奇形の漢方投与による変化 
a投与前 b6カ月後 c15カ月後

用語解説

(※1)リンパ管奇形(LM)
頭頸部に多く発生し、特に小児や新生児で気管支圧迫などの著しい合併症を引き起こすこともあるリンパ系の先天性奇形です。
(※2)越婢加朮湯
被験薬:越婢加朮湯(商品名 ツムラ越婢加朮湯®、製品番号:028)
薬効分類:漢方製剤
配合生薬:石膏(セッコウ)、 麻黄(マオウ)、蒼朮(ソウジュツ)、 大棗(タイソウ)、 甘草(カンゾウ)、 生姜(ショウキョウ)
現在認可されている適応症:腎炎、ネフローゼ、脚気、関節リウマチ、夜尿症、湿疹
(※3)硬化療法
硬化療法は、静脈瘤内に特殊な薬剤を注入し、リンパ管を縮小させる治療法です。
(※4)mTOR阻害薬
細胞の増殖や血管の新生に関わるmTORという物質があります。この物質の働きを阻害することで抗腫瘍効果をあらわす薬のことです。
 

参考論文

  • https://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2021/12230/Effect_of_Japanese_Kampo_medicine,_eppikajutsuto,.165.aspx
【お問い合わせ先】

広島大学病院 漢方診療センター
特任教授 小川 恵子
E-mail:hiroshima.u.kampo*gmail.com
<臨床研究参加者を募集しています>

(注: *は半角@に置き換えてください)


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