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【研究成果】HER2陽性大腸がんに対する抗HER2抗体併用療法が世界初の薬事承認を取得

本研究成果のポイント

  • HER2(※1)陽性の治癒切除不能な進行・再発大腸がん(がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌)に対して、ペルツズマブとトラスツズマブの抗HER2抗体併用療法が日本で世界初の薬事承認を得ました。
  • 同治療に有効性が期待されるHER2陽性大腸がん患者さんを同定するための診断法(免疫組織化学染色法(IHC法)(※2)、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法(FISH法)(※3))もコンパニオン診断薬(※4)として薬事承認されました。
  • 本承認はHER2陽性大腸がん患者さんに対して同治療の有効性・安全性を評価した医師主導治験(TRIUMPH試験)の研究成果が基になっています。

概要

 広島大学病院がん治療センターの岡本渉准教授(研究当時:国立がん研究センター東病院トランスレーショナルリサーチ支援室長)、国立がん研究センター東病院消化管内科の吉野孝之科長、同科・トランスレーショナルリサーチ支援室の中村能章医員、同院の大津敦院長らの共同研究グループが実施したHER2陽性大腸がん患者さんに対する抗HER2抗体(ペルツズマブおよびトラスツズマブ)併用療法の有効性と安全性を評価する医師主導治験(TRIUMPH試験、EPOC1602)の研究成果を基に、両薬剤が「がん化学療法後に増悪したHER2陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」に対して2022年3月28日に日本で世界初の薬事承認を取得しました。
また、同治療に有効性が期待されるHER2陽性大腸がん患者さんを同定するための診断法(コンパニオン診断薬)として、免疫組織化学染色法(IHC法)、蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法(FISH法)も薬事承認されました。
本成果は、大腸がんの1~5%にみられるHER2陽性大腸がん患者さんに対して、新たな治療法を提供することとなり、予後の延長やQOLの向上に寄与することが期待されます。なお、TRIUMPH試験、SCRUM-Japanレジストリの研究成果は、米国科学雑誌「Nature Medicine」に日本時間2021年11月12日付けで掲載されています。

用語解説

(※1)HER2
細胞表面に存在する受容体型糖タンパクの一つである「ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型:human epidermal growth factor receptor 2」の略。HER2は正常細胞において細胞増殖や分化などの調節に関与している。HER2遺伝子の増幅やHER2タンパクの過剰発現を認めるがん細胞は増殖・分化の制御に異常をきたす。

(※2)免疫組織化学染色法(IHC法)
酵素などで標識した抗体を用いて組織標本中の特定の抗原(タンパク)を検出する方法。IHCはimmunohistochemistryの略。

(※3)蛍光 in situ ハイブリダイゼーション法(FISH法)
蛍光物質で標識したオリゴヌクレオチドプローブを用いて組織標本中の特定の遺伝子を検出する方法。FISHはfluorescence in situ hybridizationの略。

(※4)コンパニオン診断薬
治療薬の有効性や安全性を高めるために、その治療薬の使用対象患者に該当するかどうかをあらかじめ検査する目的で使用される診断薬。

論文情報

  • 掲載誌: Nature Medicine
  • 論文タイトル: Circulating tumor DNA-guided treatment with pertuzumab plus trastuzumab for metastatic colorectal cancer with HER2 (ERBB2) amplification: the TRIUMPH phase 2 Trial
  • 著者名: Yoshiaki Nakamura*, Wataru Okamoto*, Takeshi Kato, Taito Esaki, Ken Kato, Yoshito Komatsu, Satoshi Yuki, Toshiki Masuishi, Tomohiro Nishina, Hiromichi Ebi, Kentaro Sawada, Hiroya Taniguchi, Nozomu Fuse, Shogo Nomura, Makoto Fukui, Seiko Matsuda, Yasutoshi Sakamoto, Hiroshi Uchigata, Kana Kitajima, Naomi Kuramoto, Takashi Asakawa, Steve Olsen, Justin I. Odegaard, Akihiro Sato, Satoshi Fujii, Atsushi Ohtsu, Takayuki Yoshino. *These authors contributed equally.
  • DOI: https://doi.org/10.1038/s41591-021-01553-w
【お問い合わせ先】

大学病院がん治療センター
岡本 渉 准教授
Tel:082-257-5981
FAX:082-257-5981
E-mail:wokamoto*hiroshima-u.ac.jp

(注: *は半角@に置き換えてください)


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