- 論文名:Quality of life by dysmenorrhea severity in young and adult Japanese females: A web-based cross-sectional study
- 著者:水田良実1、前田慶明1、田城 翼1、鈴木雄太2、小田さくら1、小宮 諒1、浦邉幸夫1*
1. 広島大学 大学院医系科学研究科 スポーツリハビリテーション学
2. 九州栄養福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科
* 責任著者
- 掲載雑誌:PLOS ONE
- DOI:10.1371/journal.pone.0283130
【背景】
月経痛は、月経に伴って経験する子宮由来の痛みのことをいいます。日本でも多くの女性が月経痛に悩まされていて、月経痛は重大な健康問題の1つであるといえます。近年、月経痛が学業成績や仕事の効率を低下させることが指摘されており、諸外国では月経痛と生活の質に関する調査が行われています。これらの調査では、月経痛は文化的・社会的背景が密接に関連するため、国を超えて月経痛と生活の質の関連を一般化することができないことが限界点とされています。日本では月経についてタブー視される傾向が強いことや、抑うつ症状を感じやすい方が多いなど、月経痛に影響を及ぼしうる文化的・社会的背景があります。しかし、日本において月経痛と生活の質の関係は未だ明らかにされていません。このような文献上のギャップを埋めるために、月経痛の重症度が日本人女性の生活の質に影響を与えるかどうかを探ることを目的に研究を実施しました。
【研究成果の内容】
本研究は16~29歳の女性を対象に、オンラインでのアンケート調査を実施しました。アンケート調査の主な内容は、月経痛と生活の質に関するものでした。
まず、本研究の回答者と月経痛の有症率について図2に示します。有効回答495名のうち、471名が月経痛の有症者として本研究の解析に含まれました。その後、回答者は痛みの程度の評価に基づいて、軽度(156名)、中等度(249名)、重度(66名)に分類されました。本研究における軽度以上の月経痛の有症率は95.1%でした。
月経痛の重症度別に生活の質を比較した結果、月経痛が重度であるほど生活の質が低いことが明らかになりました。また、生活の質のスコアをさらに細かく分析すると、月経痛が重度な女性は、身体的、心理的、環境的な生活の質を表す下位尺度のスコアが低下していることが示されました(図3)。
これらの結果から、重度の月経痛は身体的な側面のみならず、心理的、環境的な側面を含む全般的な生活の質を阻害することが考えられました。
【今後の展開】
本研究によって、重度の月経困難症を持つ日本人女性は、生活の質が低い日常生活を送っていることが浮き彫りとなりました。この知見は、月経痛の症状を管理するための新しい治療法の確立、医療機関へのアクセスの容易化、女性の社会参加の促進など、制度の改善を設計するための基本情報として活用される予定です。そして我々は、月経痛を予防・軽減するための対応策の確立に向けて研究を続けていきます。
図3 月経痛の重症度ごとの生活の質の下位尺度の比較