広島大学 総合博物館 准教授 清水則雄
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広島大学東広島キャンパスが、令和6年9月27日に、生物多様性の保全に貢献している区域として、環境省より令和6年度前期「自然共生サイト(※1)」に認定されました。
令和6年度前期に認定された69件のうち、大学からの申請が認定されたのは本学と横浜国立大学の2件で、累計では10件です。
今後、自然共生サイト認定区域は OECM(※2)国際データベースに登録されます。本登録により、30by30(サーティバイサーティ)(※3)目標達成に直接的に貢献し、2030 年までの生物多様性に関する新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」(ネイチャーポジティブ(※4)の実現)に寄与することとなります。
広島大学は、恵まれたキャンパスの自然環境を学生教育に活かしながら後世に繋ぎ、30by30 目標の達成への貢献はもちろん、生物多様性保全と気候変動対策との両立に向けた持続可能な活動を推進していきます。
【認定区域】
広島大学東広島キャンパス 発見の小径 水辺ゾーン(8.4ha)
【協力】
復建調査設計株式会社、広島大学総合博物館公認学生ボランティア「キャンパス・スチューデント・レンジャー(CSR)」、広島大学東広島植物園、広島大学総合博物館
(※1)自然共生サイト
「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を環境省が認定する区域のこと。認定により当該サイトの生物多様性の価値維持又は質の向上が促進され、日本における30by30目標達成への貢献等が期待されている。
(※2) OECM
Other effective area-based conservation measures(その他の効果的な地域をベースとする手段)の頭文字をとったもので、国立公園などの保護地区ではない地域のうち、生物多様性を効果的にかつ長期的に保全しうる地域のこと。
(※3) 30by30目標
2030年までに、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標。2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択。
(※4) ネイチャーポジティブ
日本語訳で「自然再興」といい、「自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させる」ことを指す。国内では、2023年3月に閣議決定した生物多様性国家戦略2023-2030において2030年までにネイチャーポジティブを達成するという目標が掲げられている。
自然共生サイト認定区域(黄色枠のエリア)
サイト概要等
本サイトは広島大学東広島キャンパス内に位置する。キャンパス内には良好な自然環境が残り、多くの絶滅危惧種を含む希少な動植物の棲息地となっている。
多くの絶滅危惧種を含む希少な動植物の棲息地としては、特に以下2つの場としての生物多様性の価値がある。
1.希少な動植物種が生息生育している場あるいは生息生育している可能性が高い場
【場の概況】
サイト内は下草刈りや耕作などの管理が行われた良好な環境が維持されており、林、草地、渓流、湿地などの多様なハビタットには、様々な生物が生息している。
学生らの調査によって、環境省RDB、広島県RDBに記載されている希少種が53種確認されている。
【確認された希少種】
本サイト内では、環境省RDBまたは広島県RDBに掲載された希少種として、哺乳類1種、鳥類6種、爬虫類3種、両生類4種、魚類1種、昆虫類22種、その他無脊椎動物2種、植物10種、藻類4種の計53種が確認されている。
2.越冬、休息、繁殖、採餌、移動(渡り)など、動物の生活史にとって重要な場
【場の概況】
サイト内の湿地およびふれあいビオトープでは草刈り等の維持管理が行われ、良好な湿地環境が維持されている。
特に両生類においては重要な繁殖地となっており、ニホンアカガエルなどが毎年繁殖に利用していることが確認されている。
【対象となる動物種とその動物種の生活史の内容】
ニホンアカガエル Rana japonica:サイト内では、渓流・湿地ゾーンやふれあいビオトープゾーンが好適な産卵場所となっており、1月下旬頃、繁殖のために一斉に水辺に集まる様子が確認されている。
近年水田の乾田化や水田放棄により産卵場所が減少傾向にあり、広島県RDB2021で準絶滅危惧種(NT)に指定されている。周辺のため池や水田では確認できず、里山的管理がされている本サイト内に局在しており、重要な繁殖生息地となっている。
本学の取組内容

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