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乳牛の感染症診断を自動化技術とAI画像解析により迅速化安定的な生乳生産と酪農経営の安定化を目指し、新技術を開発へ

情報提供

 国立大学法人広島大学(以下、広島大学)およびカーブジェン株式会社(関連資料1)は、乳牛に最も多く発生する細菌感染症である「乳房炎」の検査を自動化し、さらに顕微鏡画像のAI画像解析を組み合わせることで、従来2日以上必要としていた診断を30分程度に迅速化し、また実施者の熟練度により生じる解釈のばらつきを平準化することを目指した検査技術の実用化開発を開始します。本技術開発により、乳牛に最も多く発生する感染症である乳房炎による生産阻害を最小化し、安定的な生乳生産と酪農経営の安定化を目指します。
 本事業は、2024年度より広島大学およびカーブジェン株式会社が取り組んでいる、「スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)」の取り組み「課題名:自動グラム染色と微生物推定AI技術を用いた乳房炎の早期診断技術の開発」の一環として実施されます。本プログラムは、生物系特定産業技術研究支援センターが運営し、革新的な研究開発に取り組む研究開発型スタートアップ等を支援対象として農林水産・食品産業の課題解決や産業成長を目指すものです。
 このたび、2024年度に実施したPoC(概念実証)段階であるフェーズ1の取り組みが評価され、実用化開発段階であるフェーズ2への移行が認められたことに伴い、2025年度より、技術改良から現場実証までを包括的に実施する大規模な研究開発プロジェクトを開始します。

背景

 乳牛に発生する乳房炎は、乳量の低下や生乳の廃棄などを通じて、酪農における安定的な生乳生産の大きな阻害要因となっています。日本国内では、年間800億円の損害をもたらすと試算されています。乳房炎の原因の多くは細菌であるため、その治療に抗生物質などの抗菌薬が用いられますが、近年抗菌薬が効かない薬剤耐性菌の問題が顕在化しており、畜産現場においても、これまでよりも厳密な根拠に基づく抗菌薬の使用が求められています。広島大学ではこれまで、グラム染色※1を乳汁検体に応用し、検査開始から30分程度で迅速に乳房炎の原因微生物を特定する技術を開発してきました(関連資料2、3)。本事業により自動化やAI技術と組み合わせることで、乳房炎の検査技術のさらなる迅速化・平準化と、技術の社会実装を加速化させます。

 広島大学は、2025年度より酪農エコシステム技術開発センターを設置し、特に広島大学発の研究シーズをAIと統合することによる持続可能な動物性タンパク質の革新的生産技術開発を目指しています。

用語解説

※1 グラム染色 
  細菌類を色素によって染色する方法の一つで、細菌を分類する基準の一つ。

関連資料

1. カーブジェン株式会社
・所在地:東京都渋谷区神南一丁目5番13号 ルート神南ビル6階
・代表者:中島正和
・事業内容:  ライフサイエンスAIソリューションの開発・提供
ライフサイエンスプロダクトの開発・提供
細菌感染症分野におけるAI・バイオインフォマティクスを用いた次世代バイオ・医療関連技術の開発及び販売
・URL:https://carbgem.com/jp/
2. 論文タイトル:Rapid determination of pathogens in mastitic milk of dairy cows using Gram staining.
     著者:Naoki Suzuki*, Sohei Kaneko, Naoki Isobe
     掲載誌:Journal of Veterinary Medical Science (2022). 
     DOI: 10.1292/jvms.21-0631
     *:責任著者
3. 論文タイトル:Determining causal pathogens and inflammatory state of mastitis in dairy cows via Gram staining of precipitates in milk.
 著者:Naoki Suzuki*, Naoki Isobe
 掲載誌:Frontiers in Veterinary Science (2025)
 DOI: 10.3389/fvets.2024.1492564
 *:責任著者
【お問い合わせ先】

 広島大学酪農エコシステム技術開発センター 鈴木 直樹
 Tel:082-424-4182 
 E-mail:naosuzuki*hiroshima-u.ac.jp
 (*は半角@に置き換えてください)
 


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