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【研究成果】がん患者が抱える倦怠感「がん関連疲労」に対し、 刺さない鍼治療「接触鍼法」が有効であることがわかりました。

本研究成果のポイント

 がん患者の多くが経験する「がん関連疲労(Cancer-related fatigue)」に対し、身体に鍼を刺さずに行える鍼治療「接触鍼法(K-style CNT)」の有効性と安全性を、世界で初めて確認しました。

概要

 広島大学病院漢方診療センターの小川恵子教授(研究代表者)らの研究グループは、全国5施設の緩和ケア科と共同で行った臨床研究において、接触鍼法(K-style CNT)が、がん関連疲労(Cancer-related fatigue)」に対しに有効であることを明らかにしました。この成果は、The Multinational Association of Supportive Care in Cancer (MASCC)の国際誌Supportive Care in Cancer (2026年2月19日号) に掲載されました。
 また、本研究成果は広島大学から論文掲載料の助成を受けています。

背景と目的

 「がん関連疲労」とは、がん患者の多くが経験する、休息や睡眠をとっても改善しない持続的で不快な全身倦怠感や疲労感のことです。日常生活に支障をきたすほど強力なだるさ、やる気の低下、身体の消耗感が特徴で、がん治療(化学療法、放射線など)やがんそのものによる慢性的な炎症が主な原因です。
 「がん関連疲労」の回復には、適度な運動や睡眠、バランスの良い食事等の方法がありますが、これらに加わる新しい方法が求められています。
 本研究では、通常の身体症状に対する治療に加えて鍼治療を用いることにより、症状の改善、QOL(生活の質)の改善に結び付くかどうかを検討する目的で、鍼治療を行い、その臨床的有効性と安全性について、患者の自覚症状と他覚的な評価を指標として、前向きに検討しました。
 今回は鍼治療の一種である「接触鍼法」を行いました。「接触鍼法」とは、鍼を皮膚に刺入せず、皮膚の表面から経穴(ツボ)を刺激する、刺さずに行える鍼治療のことです(図1)。刺激するツボは、天枢(へそから指3本分外側に位置するツボ)、中脘(胸骨の下端とへその中間に位置するツボ)、関元(へそから指4本分下に位置するツボ)を中心とし、その他に患者さんの状態に合わせて他のツボを組み合わせ、数か所刺激して行います。鍼を皮膚に刺入せず、肌の表面に軽く接触させて刺激を与えるという施術で、刺さないので痛みはなく、肌にも優しいのが特徴です。

図1 接触鍼
接触鍼は一般的な鍼治療と異なり、鍼を皮膚に刺入せず、皮膚の表面から経穴(ツボ)を刺激する治療

方法と結果

 がん患者121名をA群 接触鍼施行群とB群 接触鍼非接触のプラセボ群にランダムに割付け、A群の患者に通常治療と並行して週1回接触鍼治療を4週間行い、倦怠感に関する自覚症状のアンケートや検査を通じて、がんの倦怠感スケール(CFS)スコア、疼痛、唾液アミラーゼ値の数値評価スケール(NRS)スコア等の評価を行いました。
 4週時点での重回帰分析ではSTAS-J でCNTに有意な治療効果が認められました(図2)
 唾液アミラーゼ活性の変化は、交感神経系の活性化とストレス反応の生理学的マーカーです。この結果は接触鍼が患者の苦痛の生理学的側面と心理的側面の両方に影響を及ぼす可能性を裏付けています(図3)。

図2 4週間にわたる評価スケジュール-日本語版(STAS-J)の変化
対照群(a)および鍼治療群(b)
(STAS-J)スコア。

図3 接触鍼治療群と対照群における
2週間後の唾液アミラーゼの個別変化

論文情報

  • 論文タイトル:Effect of contact needle technique on cancer‑related fatiguein palliative care patients: a randomized controlled trial
  • 著者:Keiko Ogawa-Ochiai、MD、 PhD(広島大学病院 漢方診療センター)ほか
  • 掲載誌: Supportive Care in Cancer
  • doi:https://doi.org/10.1007/s00520-026-10430-6
【お問い合わせ先】

広島大学病院 漢方診療センター
教授 小川 恵子(おがわ けいこ)
E-mail:okeiko22@hiroshima-u.ac.jp
TEL:082-257-1921(内線 6921)


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