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【研究成果】原子力・放射線事故発生時にスマホを使って現場で放射線測定が可能に 安価で持ち運べる線量測定システムを開発

【本研究成果のポイント】

・ 市販の線量計用ラジオフォトルミネセンス(RPL)ガラスと携帯可能な紫外線(UV)照射装置(価格5万円前後)、およびスマートフォンを組み合わせた、低コストで携帯可能な緊急時線量測定技術を開発
・ 緊急事態発生時に個人で高線量被ばくの検出・評価が可能に
・ 放射線影響が懸念される線量レベルでの測定精度は5%未満
・ 現場における患者の迅速なトリアージに貢献

【概要】

 広島大学原爆放射線医科学研究所線量測定評価研究分野の大学院生・リサーチアシスタントであるソヘイル・アガバクルイと保田浩志教授は、株式会社千代田テクノル大洗研究所(茨城県)の柳田由香研究員、小口靖弘所長の両氏とともに、スマートフォンを使った緊急時用の線量測定技術を新たに開発しました。本研究成果は2026年3月17日、The European Physical Journal Plus誌(Springer Nature社)に掲載されました。

【背景】

 放射線被ばくの影響から人々を守るには、迅速な個人単位の線量評価が不可欠です。銀を添加したアルカリリン酸塩ガラスからなるRPL線量計は、個人被ばくおよび環境モニタリングに広く用いられています。
 しかし、RPL線量計の読取りには通常、大型で高価な装置が必要であり、原子力事故等の放射線緊急事態に求められる、被ばくした人の線量を現場で直ちに評価して適切な医療処置を施せるようにすることは困難です。安価で個人で携行できる装置を用いて、誰もが正確で再現性の高い線量測定ができるようになれば、より安全・安心な放射線業務の遂行と、万が一の事故発生時にも迅速で確かな治療の実施につながるものと期待されます。

【研究成果の内容】

 放射線業務従事者の被ばく管理に使われている市販のRPLガラス(8mm×8mm×1.5mm)に、X線(160kVp、6.3mA)を0.5~10Gyの範囲で照射し、携帯型UV照射器(波長λ=254mm)でUV光を当てると、RPLガラスは青色から線量に応じた強度のオレンジ色へ変化することが確認されました。このRBG(赤・緑・青)カラー画像を、ISO感度(ISO)、ホワイトバランス(WB)、シャッタースピード(SS)を変えながら、異なるタイプのスマートフォン(サムソン社製Galaxy S23 および Note8)で撮影し(図1)、色強度と線量の関係を明らかにしました。

 RGB色成分のうち、赤色は両スマートフォンにおいて最も強く、かつ一貫した線量応答を示しました。高感度測定(ISO800~1600、ホワイトバランス9000~10000K、シャッタースピード0.1秒)の撮影条件では相対的な背景ノイズが最小になり、RPLの強度を正確に(3回の測定で5%未満の変動で)測定できることが確認できました(図2)。本研究で得られた知見から、RGB色強度と線量との関係を予め定量化しておき、スマートフォンのカメラ設定を最適化すれば、本研究で提案した安価なシステムを用いて、放射線誘起RPLを正確に測定し、放射線の健康への影響の観点から重要な0~10Gyの線量範囲を正確に評価できることが確認されました。

【今後の展開】

 本研究で得られた知見を基盤として、今後はさらに小型で安価なUV照射装置および最新モデルのスマートフォンの多様な組み合わせに適用できる、標準となる緊急時線量測定用のプロトコル確立を目指して検討を進めていく予定です。

【論文情報】

・掲載誌:The European Physical Journal Plus
・論文タイトル:A low-cost emergency dosimetry technique using radiophotoluminescence glass
・DOI:https://doi.org/10.1140/epjp/s13360-026-07529-4
・著者名:Soheil Aghabaklooei, Hiroshi Yasuda*, Yuka Yanagida & Yasuhiro Koguchi

 本研究は、日本学術振興会(JSPS)「Japan’s Peak Research Universities形成プログラム(JSPS J-PEAKS)」および「放射線災害医療科学ネットワーク型共同利用・共同研究拠点プログラム」の一部支援を受けて実施されました。
 

【お問い合わせ先】

広島大学原爆放射線医科学研究所 保田浩志
Tel:082-257-5872 FAX:082-257-5873
E-mail:hyasuda*hiroshima-u.ac.jp

(*は半角@に置き換えてください)


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