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藻類のもつ微結晶が光を有効利用する原理解明にせまる~磁場で微結晶の向きを揃える新技術で光反射特性を明らかに~



国立大学法人広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所の岩坂正和教授、国立大学法人筑波大学生命環境系の白岩善博教授らの研究グループは、藻類の細胞外被・外殻結晶の向きを磁場で遠隔操作する手法を開発し、円石藻のつくる炭酸カルシウムの円盤状の微結晶(円石、ココリス、図1)が光を効率的に反射する方向を特定することに成功しました。



(図1)円石藻Emiliania huxleyi の藻体と円石(ココリス:coccolith)

【本研究成果のポイント】

●藻類の細胞外被・外殻結晶の向きを永久磁石程度の磁場(数百mT(ミリテスラ))で遠隔操作する方法を開発しました。

●この方法を応用して、円石藻の円石の向きを磁場で制御しつつ分光計測する新手法を開発し、円石が光を効率的に反射する方向を特定することに成功しました。

●これにより、藻類がバイオミネラリゼーション(生体鉱物形成)によって円石のような微結晶を細胞表面に配置することの植物生理学的意義の解明が大きく前進するとともに、マイクロメートル・オーダの微結晶を永久磁石程度の磁場で、非接触かつ任意の方向に向ける技術への応用も期待できます。

藻類の中には、進化の過程で微結晶を細胞表面に配置するようになったものも多くありますが、その目的は謎につつまれています。特に、植物プランクトンである円石藻がその光合成機能を有効に使うために円石を利用している可能性が推測されてきたにも関わらず、その実験的証明は技術的に難しく、科学的なアプローチはなされていない状況でした。これを解明するために、実験的に実際の円石での光反射の方向依存性を計測する技術開発が望まれていました。

円石藻Emiliania huxleyi(エミリアニア・ハックスレー)の円石は、方解石型炭酸カルシウム微結晶からなる複数の構造体で形成されています。岩坂教授らの研究グループは、その円石が磁場中でもつ反磁性の磁化率異方性が駆動力となり、400mTの磁場で円石を回転させて磁力線に対し垂直に並ぶことを発見しました(図2、3)。そして、マイクロメートルサイズの円石を水中で非接触かつ任意の方向に向かせることを、永久磁石程度(数百mT)の磁場で実現しました。さらに、これを応用して、円石の配向と光反射の強度分布を調べる手法を開発し(図4)、円石が光を効率的に反射する方向を特定することに成功しました。

(図2)

(図3)

(図4)

※クリックで拡大

この微結晶の光学特性と植物生理学的意義の関係が解明できれば、藻類バイオエネルギー産生の効率化につながる可能性もあります。さらには、これら微結晶をマイクロ光学材料としてバイオセンサー等へ活用できる可能性もあります。

本研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業「藻類・水圏微生物の機能解明と制御によるバイオエネルギー創成のための基盤技術の創出」研究領域の個人型研究(さきがけ)<広島大学の岩坂正和教授>の一環として行われ、同一研究領域のチーム型研究(CREST)<筑波大学の白岩善博教授>と共同で行ったものです。

本研究成果は、平成27年9月1日午後6時(日本時間)、英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン版)に掲載されました。

【論文情報】

<発表論文>

著 者

Yuri Mizukawa, Yuito Miyashita, Manami Satoh, Yoshihiro Shiraiwa, Masakazu Iwasaka*

* Corresponding author(責任著者)

論文題目

Light intensity modulation by coccoliths of Emiliania huxleyi

as a micro-photo-regulator

(マイクロ光学調整素子としてのエミリアニア・ハックスレーの円石による光強度変調)

掲載雑誌

Scientific Reports

doi: 10.1038/srep13577(2015)

【お問い合わせ先】

国立大学法人広島大学ナノデバイス・バイオ融合科学研究所

教授 岩坂 正和(いわさか まさかず)

TEL&FAX:082-424-4372

E-mail:iwasaka*hiroshima-u.ac.jp(*は@に置き換えてください)


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