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【研究成果】慢性腎臓病で便秘が増加 腎機能が最も低い群では約2人に1人に便秘がみられることを確認

概要

 広島大学大学院医系科学研究科 福間真悟 教授、京都大学大学院医学研究科 比良野圭太 特定准教授、米国University of California, Los Angeles (UCLA)  住田圭一 教授らの研究グループは、日本国内の健康診断・医療レセプトデータを用いた全国規模の研究により、慢性腎臓病の進行に伴い便秘のある人の割合が高くなることを明らかにしました。

 本研究では、2015~2023年の日本の健診・レセプトデータから、腎機能の指標であるeGFR(estimated glomerular filtration rate: 推定糸球体ろ過量)が把握できる20~74歳の延べ217,734人(903,984人年)を解析しました。その結果、便秘は全体では約10人に1人にみられましたが、腎機能が保たれている人では9.4%だったのに対し、腎機能がやや低下した人では13.1%、さらに低下した人では20.3%、かなり低下した人では25.3%、最も低い人では45.2%に達しました。つまり、腎機能が最も低い群では、ほぼ2人に1人が便秘を有していたことになります。

 この関連は、年齢、性別、糖尿病や高血圧などの病気、薬の使用状況などの影響を考慮しても認められ、腎機能が保たれている人を基準に比較すると、腎機能が最も低い群では便秘がみられる可能性が約2.5倍高いことも示されました。

本研究成果は、2026年3月11日に Clinical Kidney Journal に掲載されました。
 

腎機能(eGFR)の区分別にみた便秘の割合。腎機能が低い群ほど便秘の割合が高かった。

1.背景

 便秘は多くの人が経験する身近な症状ですが、慢性腎臓病のある人、特に透析を受けている患者では、より起こりやすいことが知られています。慢性腎臓病の患者では、加齢に加え、糖尿病などの併存疾患、食事や水分摂取の制限、使用している薬剤など、便秘につながる要因が重なりやすいためです。一方で、慢性腎臓病の進行と便秘がどの程度関係しているのかについては、これまで十分に分かっていませんでした。

2.研究手法・成果

 研究グループは、日本国内の大規模健診・レセプトデータベースを用い、2015~2023年に健康診断を受けた20~74歳のうち、腎機能データを有する延べ217,734人(903,984人年)を解析しました。便秘は、医療機関で便秘と診断されている場合、または下剤が処方されている場合と定義しました。腎機能は eGFR に基づき、5段階に分類して比較しました。

 その結果、便秘のある人の割合は、腎機能が低下するほど高くなっていました。腎機能が保たれている群では 9.4% でしたが、腎機能が少し低下した群では 13.1%、中等度に低下した群では 20.3%、高度に低下した群では 25.3%、最も低い群では 45.2% でした。腎機能が大きく低下した人では、便秘が非常に身近な問題になっている実態が示されました。

 さらに、年齢、性別、BMI、血圧、糖尿病や心血管疾患などの併存疾患、鉄剤、カリウム低下薬、リン吸着薬、オピオイド鎮痛薬、抗うつ薬などの薬剤使用の影響を考慮しても、腎機能低下は便秘と有意に関連していました。腎機能が最も低い群では、腎機能が保たれている群と比べて、便秘がみられる可能性が 2.44 倍高いという結果でした。

 また、便秘治療に使われる薬の種類にも違いがみられました。全体としては刺激性下剤や、マグネシウム系および非マグネシウム系浸透圧性下剤が多く使われていましたが、進行した慢性腎臓病ではマグネシウム製剤の使用が少なく、新しい便秘治療薬の使用が多い傾向がありました。これは、腎機能の状態に応じて薬の選択が変わっていることを示しています。

3.波及効果、今後の予定

 本研究により、便秘は透析患者だけの問題ではなく、慢性腎臓病のさまざまな段階でみられる重要な症状であることが示されました。特に、腎機能の低下と便秘の関連が、年齢や他の病気、薬の影響だけでは説明できなかったことから、便秘は慢性腎臓病そのものに伴う症状のひとつである可能性があります。

 便秘は一般に、自然に良くなる軽い症状として見過ごされがちですが、生活の質を大きく下げ、食事や服薬、日常生活にも影響するだけでなく、心臓病や脳梗塞などの発症にも関わることが知られはじめています。今回の結果は、腎機能が低下している患者では、便秘の有無を早めに確認し、適切に対応することの大切さを示しています。また、慢性腎臓病の進行度によって使われる下剤の種類が異なることから、腎機能に応じた安全で適切な便秘管理の重要性も示唆されました。

 一方で、本研究はある時点での状態を調べた横断的解析であり、便秘が先に起こるのか、腎機能低下が先なのかといった因果関係までは明らかにしていません。今後は、便秘と腎機能低下の時間的な関係や背景にある仕組みをさらに詳しく調べ、便秘への介入が慢性腎臓病の診療改善につながるかを検討していく予定です。

用語解説

慢性腎臓病    腎臓の働きが慢性的に低下した状態を指します。進行すると、透析や腎移植が必要になることがあるほか、心血管疾患のリスクも高まります。

eGFR    血清クレアチニン値、年齢、性別などから計算される腎機能の指標です。値が低いほど腎機能が低いことを示します。

便秘    本研究では、医療レセプト上の便秘診断、または下剤処方のいずれかがある場合と定義しました。

研究者のコメント

今回の研究により、便秘が慢性腎臓病の進行に伴って増え、腎機能低下と独立して関連することが示されました。便秘は見過ごされやすい症状ですが、慢性腎臓病のある方の生活の質や治療継続、さらには予後にも関わる重要な問題です。今後は、どのような患者で便秘のリスクが高いのか、また適切な介入が腎臓病診療の改善につながるのかを明らかにしていきたいと考えています。

論文タイトルと著者

タイトル Constipation prevalence and its association with kidney function: a large nationwide Japanese health check-up cohort study
著者 Keita Hirano, Keiichi Sumida, Shingo Fukuma
掲載誌 Clinical Kidney Journal
掲載日 2026年3月11日
DOI 10.1093/ckj/sfag082
 

【お問い合わせ先】

福間 真悟(ふくま しんご)
広島大学大学院医系科学研究科 教授
TEL:082-257-5162
E-mail:shingo-fukuma*hiroshima-u.ac.jp 、fukuma.shingo.3m*kyoto-u.ac.jp
<報道に関するお問い合わせ先>
広島大学 広報室
TEL:082-424-3701 FAX:082-424-6040
E-mail:koho*office.hiroshima-u.ac.jp

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