第42回 パイロットになる夢を、日本でも追い続けています!

等身大の広大生の声を、受験生・高校生のみなさんへお届けする『広大生、先輩インタビュー』。第42回は、総合科学部 国際共創学科(IGS) 1年の周藤 翔(すとう ショーン)さん(イギリス Tiffin School / ティフィン スクール 出身)です。

イギリスの首都・ロンドンで生まれ育った周藤さん。英語で授業が行われ、留学生も多く在籍する国際共創学科に魅力を感じ、広島大学を受験しました。パイロットになりたいという夢をかなえるため、資格取得の勉強もしながら、福島県の復興支援活動などにも取り組む周藤さんに、日本の大学を受験しようと思ったきっかけや広島大学での学生生活について話を伺いました。

生まれてから18年間イギリス暮らしとのことですが、日本語も流暢に話せますね。

高校まで現地の学校に行っていたこともあり、英語は自然と身につき、中学3年生で英検1級に合格しました。両親が日本人なので、家の中での会話は日本語。毎週土曜日には、日本語補習授業校という、国語を勉強する学校にも通っていました。小学部1年の時から高等部3年まで、日本の学生が学ぶのと同じ内容を勉強しました。英語・日本語を習得する環境に恵まれていたと思います。

日本のテレビ番組もよく見ていましたし、食卓に並ぶ料理もほとんど日本食なので、家の中ではあまりイギリスを感じませんでしたね。自宅はロンドンの西側にある『イーリング(Ealing)』という日本人が多く住む町にあり、日本人の友達も多くいます。

生まれ育ったEalingの町

なぜ日本の大学に進学しようと思ったのですか。

教育レベルの高い大学が多くあるイギリスですが、生活費や授業料も高いため、大抵の学生は多額のローンを組んで大学に通います。また、就職についても、日本と違い新卒対象の就職システムはなく、EU離脱の影響もあり、新卒での就職が厳しい状況にあります。

そのような事情もあり、高校生で進路について考え始めたとき、日本の大学への進学を視野にいれるようになりました。国立大学に絞って、海外からの受験を行っている大学を調べるうちに、英語で授業を行っている国際共創学科(IGS)について知り、広島大学に興味をもつようになりました。

入試については、AO入試の国外選抜型で国際共創学科を受験しました。1次選考では、約400字程度の英語の小論文を出願書類と共に提出し、2次選考はイギリスからSkypeを使って面接に参加しました。

実際に広島大学に入学してみての感想は。

僕のような帰国生も含め、海外からの学生の受け入れ態勢がしっかりしていると感じました。学生寮の入居手続きは渡日前に済ませることができましたし、寮費も安く、学生支援が他大学に比べて充実していると感じましたね。

これまでも長期休暇などで、ほぼ毎年日本を訪ねていますが、実際に日本に住民票を移し、国民として生活するのはこれが初めて。保険や、医療機関の利用方法、携帯電話会社との契約など、全てにおいてイギリスとは異なり、入学前はきちんと暮らしていけるだろうか、と不安を感じていました。実際に学生生活がスタートすると、学生支援制度も充実しており、多くの不安が解消されました。ミールカード(キャンパス内の食堂の年間定期券)で朝昼晩いつでもキャンパスの食堂で食事ができるのもいいですね。今学んでいるキャンパスがある東広島市も、大都市ロンドンとは全く異なりますが、自然が豊かで、良い環境だなと思います。

まだスタートして間もない国際共創学科(IGS)は、どのような雰囲気ですか。

IGSは2018年にスタートした新しい学科で、留学生も多く、多様な背景の学生が一緒に学んでいます。一学年は約40人と小規模なのでみんな仲が良く、入学して2週間ほどでみんな打ち解けていました。入学してすぐに一年生のほぼ全員で焼肉を食べにいき、朝5時までカラオケをしたのも、今ではよい思い出です。

IGSでは『IGS as One Family』というフレーズをよく使うのですが、先輩後輩の壁もなく、先生方も非常にフレンドリーで、本当に家族のようです。みんなで切磋琢磨して、困難や壁にぶつかった時は、力を合わせて乗り越えて行く。理想としていた楽しい学生生活が送れています。

イギリスから日本へ帰国した友人たちに会うと、日本では英語を使う機会が少ないため、英語を忘れてしまうという話をよく聞きます。そういった点で、英語で授業が行われるIGSは、僕にとっては語学力を維持するのにもベストな環境です。日本人の学生や先生方から、英語に関する質問をされることもあります。今まで無意識に英語を使っていたのですが、イギリスにいた頃よりも英語について考える機会も増えました。周りの学生の役に立ちながら、自分の英語力も向上しているように思います。

現在1年生の周藤さん、IGSではなにを学ばれているのですか。

現在は、観光学について英語で勉強しています。世界でどのように観光・旅という行為が発展したかや、近年の観光の流行について勉強しています。例えば、ダークツーリズムという人類の悲しみや死に関する観光や、コンテンツツーリズムという文学や映画、アニメなどの舞台を巡る観光などについてです。また、格安航空会社(LCC)の普及や、Airbnbなどの観光客に宿泊施設を貸し出すというような、現代観光のトレンドについても学んでいます。

このほか、日本の地理、例えば、日本の自然や、日本の人口統計についても学んでいます。イギリスの高校で地理学を専攻していたので、高校の勉強の延長という感じですね。卒論を書く際にも重要な、信頼できるデータの集め方なども勉強します。

IGSでは、1年生の終わりに、3つの視点(文化と観光・平和とコミュニケーション・環境と社会)から1つを選び、4年生でそのテーマについて卒業論文を書きます。僕の場合、文化と観光を選択し、観光についてさらに詳しく勉強していこうと考えています。
 

IGSの授業以外で、なにかチャレンジしていることはありますか。

広島大学には、英語のプレゼンテーションコンテストや、自然を巡るツアーなど、学生が誰でも参加できる企画が数多くあります。昨年の夏休みには、IGS学科長のフンク・カロリン先生に声をかけてもらい、福島県スタディーツアー2019というツアーに参加しました。そこで、福島県の復興の状況や、福島県の魅力を体験しながら、福島県の広報課の皆さんと連携して県のPRなども行いました。 

福島スタディツアー

福島に一緒に行った仲間たち

英語で多くの授業が行われるIGSですが、もちろん他の学科や学部の授業を受けることも可能です。広島大学では文系理系の学部を問わず、日本語・英語で教える授業があるので、留学生でもさまざまな分野を学ぶことができます。僕の場合、小学校低学年のころから航空機のパイロットになるという夢があるので、工学専門の先生による『乗り物と輸送の科学』という教養教育科目の授業も受けています。

パイロットになるという明確な目標があるのですね。

自宅が世界で7番目に利用客数が多いロンドン・ヒースロー空港に近かったことから、毎日家の上を飛んで行く飛行機を見ていました。旅行好きだった両親に、よく外国に連れて行ってもらったこともあり、飛行機に夢中になるのに時間はかかりませんでした。小学生の頃「なぜ重たい鉄の塊が空を飛べるのだろう?」と不思議に思ったものです。

大学に入学し、観光や航空機関係の講義を受けるだけでなく、航空無線通信士、ドイツ語検定2級、気象予報士の資格取得にむけた勉強もはじめました。この4年間に、夢の実現に向けていろいろな資格を取得し、さまざま経験を積み、自分を磨きたいと思います。

ちなみに、イギリスにも「受験勉強」はあるのでしょうか。

イギリスの高校では受講する科目を4つに絞り、専門的に学習します。僕の場合、広島大学でも履修している地理学に加え、数学、物理学、経済学を選択していました。そして、高校の最終学年が終わる夏に、A-Levelという高校卒業資格(学業修了認定)試験を受験します。

科目は4科目なので、日本の高校生に比べると自由な時間は多いかもしれませんね。A-Levelに向けた勉強で苦労したことは、モチベーションを維持することでした。特に、高校の授業の内容が難しくなってくると、自分のやる気が低下していく事が多かったと思います。そういう時は、音楽を聞いたり、YouTubeを見たりして気分転換をしていました。また、一緒に授業を受けている友達と集まり、学んだことを教え合うことで、内容の再確認をしつつ、効率良く重要なポイントを覚える事ができました。

国を問わず、受験勉強においては、自分の将来の目的を見失わない事が重要だと思います。将来を想像する事で、どのようにしてその目標・理想像に辿り着こうか、という思考になり、自然とモチベーションがあがるのだと思います。

インタビューに応じる周藤さん

最後に、広島大学を目指す後輩たちへのメッセージをお願いします。

受験勉強では、辛いことがたくさんあると思います。また、大きな壁にぶち当たった時に、不安になるかもしれません。そういう時は、自分にとって楽しいことをして、息抜きをしてください。そして、リフレッシュ出来たら再び立ち上がってください。

辛いと思った事こそが、自分が努力をしているという証です。そしてその諦めない気持ちが、必ず結果に繋がると思います。自分を信じて、学んできたこと全てをぶつけてください。応援しています!Best of Luck!

 

2020年1月14日 取材・写真/広報グループ(K)
取材場所/中央図書館


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