第46回 大好きなクロダイを研究するため広大へ

等身大の広大生の声を、受験生・高校生のみなさんへお届けする『広大生、先輩インタビュー』。第46回は、生物生産学部生物生産学科水産生物科学コース4年中山 慎太郎(なかやま しんたろう)さん(富山県立高岡南高等学校出身)です。

クロダイ(チヌ)好きが高じて、海野徹也教授の研究室で学びたいと郷里の富山県から離れた広島大学を受験した中山さん。「念願だった研究室に入って大好きなクロダイの研究ができて楽しいです」と笑顔で語ってくれた中山さんのクロダイとの出会いや取り組んでいる研究について紹介します。

クロダイとの出会いについて教えてください。

もともと生き物が好きで田舎育ちだったため、子どものころは用水路や川でザリガニやドジョウを捕まえて遊んでいました。本格的な釣りをしたことはなかったのですが、小学6年生の時、友達が読んでいた海釣り入門の本で見たクロダイに一目ぼれし、自分でクロダイを釣ってみたい!と本を読んだり調べるようになりました。中学生になって、たまたま海釣りに行ったとき、『ちぬ倶楽部(※1)』という雑誌の取材記者と出会いました。そのとき撮ってもらった写真が掲載された号に「ウキフカセ釣り」という釣法が紹介されていて、同じ釣法を始めました。

※1 チヌ釣り専門誌(内外出版社)

大好きなクロダイとともに

中学生、高校生時代は釣りに没頭されていたのですか。

中学ではバレーボール部に所属していたため、引退後の3年生の秋ごろから本格的に釣りをはじめました。クロダイのウキフカセ釣りは専用の竿が必要だったり、エサ代もかさむため、お小遣いやお年玉を貯めてやってました。『ちぬ倶楽部』で出会った方に釣りに連れて行ってもらったりしていたのですが、釣りに行かないとなぜか成績が下がるという・・・(笑)
高校では最初の1年間は必ず部活に入らなければならなかったので、休日は釣りができる、ゆるい部に所属していました(笑)

広島大学への進学を決めた一番の理由は何だったのでしょう。

クロダイのことをもっと知りたい、より多く釣りたい!と思い、調べていくうちに広島大学の海野先生がクロダイの研究を行っていることを知りました。
海野先生のもとで、クロダイについて学びたいと考え、広島大学生物生産学部への進学を決めました。

富山から広島に大学進学する人は少なかったのでは?

友人や知り合いには、全くいなかったですね。
広島大学の模試を受ける際も、富山県内ではやっていなかったので、隣の石川県まで行きました。

受験のとき苦労したことはありましたか?また受験勉強で工夫していたことはありますか?

周りに広島大学を受験する人がいなかったので不安はありました。できるだけ多くの過去問を解くことを心がけていました。過去問から苦手な部分を集中して対策をしていました。勉強も大事ですが、ストレス発散や自信を持つことが大切だと思います。

生物生産学部に入学後、海野研究室へすんなり入れたのですか。

2年生の後期からコース配属があり、水産生物科学コースに所属しました。(※2) 3年生の後期から研究室に分かれて、念願の海野研究室に入りました。

※2 2018年度以前入学生向け旧コース名

このときはじめて海野先生と対面したのですね。

いや実は、1年生のときに研究室を訪問したことがありまして・・・(笑)
大学近くの釣具店でバイトしているので、海野研究室の先輩と知り合い、遊びにきていいよと誘ってもらいました。海野先生とも会ったのですが、緊張してあまり喋れなかったです(笑)

中山さんが取り組んでいる研究について教えてください。

クロダイは、「雄性先熟型性転換魚」(成長に従い、オスからメスにかわる魚)だとされています。しかし、釣りをしていると、小さなクロダイがメスであったり、大きなクロダイがオスであることが珍しくありません。オスからメスに性転換することについて疑問を抱きました。クロダイの性転換についての研究例は少なく、再検証する必要があると考え、研究を行っています。

海野研究室ではどんなやり方で研究を進めていくのでしょう?

瀬戸内海でのフィールドワークが多いです。クロダイなどの魚卵のサンプリング(検体の収集)はネットや採水器で行い、寄生虫のサンプリングは釣獲や仕掛けによる採取により行っています。
自分の研究だけでなく、研究室の他のメンバーのサンプリングや調査の手伝いで海に行くこともあります。クロダイの産卵期(3月末~6月末)になると、週2回は海に行ってますね。特定の釣り場はないので、いろんなところで釣っています。

検体を顕微鏡で観察

平日のスケジュール

9:00~9:30 起床、自宅で朝食
10:00~12:00 研究室
12:00~12:50 食堂で昼食
12:50~16:30 研究室
16:40 帰宅
17:00~23:00 釣具店でアルバイト
23:10~ 帰宅、夕食(基本は自炊)
25:00 就寝

釣りをしていると、地域の方との交流も多いのでは?

僕の場合、研究対象の小さいクロダイを狙って釣っていると、周りで釣りをしている方から「そんな小さいの釣ってどうするの?」と聞かれることがあります。「ここは小さいのしか釣れないよ~」って教えてもらったり(笑)
釣り具屋でバイトしていることもあって、お客さんが「釣れたぞ~」って僕が集めているサイズの魚を持ってきてくれることもあります。研究室のFacebookで「こんな魚を集めています」って発信すると、それを見た一般の方が釣れそうなエリアを教えてくれたり、釣った魚を冷凍で送ってくださったりします。地域の方とのつながりができるのはこの研究室ならではかもしれませんね。

海野研究室では、課外活動やボランティア活動にも力を入れておられるようですね。

地元ラジオ局の「フィッシュでJOY」というコーナーに、研究室のメンバーが交代で出演させてもらっています。自身の研究内容や最近の釣果などを発信しています。僕も今年の4月に出演しました。
僕自身は参加できていないのですが、魚食普及としてチヌ唐(クロダイの唐揚げ)をイベントで販売したり、地元河川を守るために小学生向けの出前授業を行ったりもしています。

卒業後はどのような道を歩まれる予定ですか?

大学院に進学し、クロダイの性転換についての研究を引き続き行う予定です。その後は、県職員として水産職に就きたいと考えています。はじめは富山に帰ろうと思っていたのですが、広島の釣り環境がすごく良いので悩んでいます(笑)

最後に広島大学を目指す後輩たちへメッセージをお願いします。

僕のように受験や入学時に知り合いが全くいなくても、広島大学で学びたいと思う人は安心して受験、入学してください。
生物生産学部では、目的をもって入学した人だけでなく、まだやりたいことが見つからずに入学した人も様々な分野を学んだ後にコースや研究室の選択ができるので、やりたい事や学びたい事が見つけやすい環境が整っています。生物生産学部にぜひきてください!

2021年10月 取材・写真/広報グループ(H)
取材場所/生物生産学部ロビー


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