平成22年度(秋季入学式)

学長式辞(平成22年度入学式)2010.10.1

銀杏や楓の葉が色つきはじめ、広島大学のキャンパスに秋の佇まいが深まりつつあります。この広島大学に本日、歯学部歯学科に5名、大学院には、博士課程前期に119名、博士課程後期に60名、博士課程に18名、合計202名の方々をお迎えすることになりました。皆さんの入学を心より歓迎すると共に、広島大学を代表してお祝い申し上げます。

広島大学は明治7年創立の白島学校を嚆矢として、幾多の変遷を経て、昭和24年、広島文理科大学、広島高等師範学校など7校を統合、1校を併合して、世界最初の被爆都市である広島市に、新制広島大学として開学いたしました。今日まで社会の各分野に11万人を超える人材を輩出し、且つ進歩する学術研究を展開することにより人類の発展に貢献して参りました。そして、現在では11学部、12研究科を擁するわが国有数の総合研究大学となっています。本学では様々な学問に出会えるという総合大学の利点を活かして、教養教育、専門教育、課外活動などを通じて有意義な学生生活を送っていただきたいと思います。

学術研究の進歩は目覚ましく、人類社会は多くの恩恵を享受してきましたが、同時に一昨年の金融危機をはじめ、環境破壊・汚染、テロなど、これまでの人類社会の発展を支えてきた20世紀型資本主義社会の歪みも明らかになりつつあります。人材交流や情報の拡散により、社会のグローバル化は急速に進み、社会の多様化や国際化への対応も不可欠になってきています。このような社会の環境変化の中にあって、私たちは21世紀知識基盤社会の中で、多様性を受け入れ、共生が成り立つ、持続可能な新しい価値観に基づく人類社会の構築を目指さなくてはなりません。

多様性が増し、国際化が進む現代社会において活躍する人材は、豊かな人間性を備え、幅広い知識・知恵を持つ必要があります。大学における教育は専門的知識・技術を学ぶと共に、知的活動を自己の人間的な成長と人類の未来に活かそうとする意欲と態度を育成するものであると思います。本学では教養教育、専門教育を通じてその様な人材育成に取り組み、一般社会や国際社会に貢献できる、品位ある優れた社会人の育成に努めています。
複雑性を増す21世紀の人類社会は克服するべき多くの課題を抱えています。これらの課題を克服することは我々に課せられた重要な使命です。大学で学ぶものは、ノーブレス・オブリージュ、知識を得ることはそれだけ社会的責任も大きくなることを改めて考えなくてはならないと思います。これら人類社会の課題と向き合い、志を高く、時代を担う気概を持って大きく成長され、社会での様々な困難に遭遇しても、それを克服できるような人材に育っていくよう期待しています。

これからの学生生活が皆さんにとって充実したものになるよう心から願い、お祝いの言葉といたします。

おめでとうございます。

平成22年10月1日
広島大学長 浅原 利正


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