平成31年(年頭挨拶)

年頭挨拶 2019.1.7

年頭挨拶2019

皆さん、あけましておめでとうございます。年の初めに当たり、ひとことご挨拶を申し上げます。今年が良き年となりますよう、心より祈念いたしております。

昨年を振り返ってみますと、7月に広島県をはじめ西日本各地を襲った西日本豪雨、9月の北海道胆振東部地震、また相次いで上陸した台風など、猛威を振るう自然災害の前に、人知の無力さを思い知らされた1年でした。とりわけ西日本豪雨災害の直撃を受けた県内では、100人を超える尊い命が失われました。想像を絶する災害を目の当たりにして私自身も何をしたらいいのか途方に暮れましたが、直ちに学長メッセージの号外を日本語、英語、中国語で学生・教職員の皆さんに届けました。

ご存じの方も多いかもしれませんが、被災した東広島市内の幹線道路は寸断され、多くの車が数日間立ち往生しました。それを知った15人の広大生がSNSを通じてお米を募り、1000個以上のおにぎりを作ってドライバーに配ったと聞きました。また「OPERATIONつながり」をはじめとする学生ボランティアも、自発的に被災地に赴いて復旧支援や居場所づくりに当たり、その数は合計1300人を超えると伺いました。学生諸君自らも厳しい状況に直面しながら、困っている他者のために何が役立つかを考え、率先して実行してくれたことを、心強く、また嬉しく思いました。
大学としましても、直ちに私を団長とする豪雨災害調査団を組織したのに続き、9月には全学から約40人の研究者を結集して防災・減災研究センターを立ち上げました。

近年、世界で自然災害が頻発する背景には、温暖化に象徴される地球規模の気候変動があることはご承知の通りです。その点からも、地球規模の環境問題解決を目指す世界共通の開発目標であるSDGsの取組が不可欠と言えます。広島大学は昨年、FE(Future Earth)・SDGs教育研究ネットワーク拠点を立ち上げました。軸足は広島に置きつつ、世界の動きを俯瞰しながら幅広く柔軟に対応できる高い視座が、広島大学には求められているのではないかと考えています。

昨年は、1000万を超える人々が犠牲になった第一次世界大戦の終結から100年の節目でもありました。しかし、その後も第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、イラク戦争などが勃発し、地上から戦火の絶えることはありません。それどころか、自国第一主義が横行し、超大国同士の貿易戦争がますます激化するなど、地球が一つにまとまろうという機運がしぼみつつある現状に危惧の念を抱かざるをえません。

「平和を希求する精神」を理念の第一に掲げる広島大学は、どのような役割が求められているのでしょうか。一つの試みとして昨年秋に始めたのが「ピースレクチャーマラソン」です。リトアニアの首相をはじめ世界的に著名な方をお招きし、平和をテーマにした講演会を開催しました。各国の歴史や多様な考え方を私たちが共有させていただくのはもちろんですが、影響力のある方々が広島の地で感じた平和のメッセージを母国や海外に伝えていただくことを主たる目的として始めたものです。

「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」。ユネスコ憲章の前文にあります至言のように、「平和の大学」としてできることを、一つずつ地道に進めていきたいと考えております。

さて、今年は大学院再編がいよいよ本格化し、4月には統合生命科学研究科と医系科学研究科がスタートします。
また、今年は開学70周年であるとともに、前史を含め150年の節目を迎える2024年に向けた助走の年でもあります。県内外の企業や団体にご参加いただいて昨年7月、「広島大学が躍動し広島の地を活性化させるための基金」の推進会を設立したところです。皆さんの周囲の方々にもご支援いただけますよう切にお願いする次第です。

先輩諸氏が長年積み上げてこられた経験知を結集し、100年後にも光り輝く広島大学の礎を築いていきたいと願っております。ご理解とご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

最後に、今年一年が皆様にとりまして希望にあふれる素晴らしい年になりますことを祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

平成31年1月7日
広島大学長 越智光夫


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