令和2年度 秋季入学式

学長式辞 令和2年秋季入学式 (2020.10.1)

 本日、292人の皆さんを、広島大学のキャンパスにお迎えできましたことを、心よりうれしく思います。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、この場に出席することがかなわなかった留学生の皆さんにも心からお祝い申し上げます。
 
 さて、今年の前半を振り返ってみますと、まさに、世界がパンデミックに席巻された半年でした。野生動物に由来するとされる新型コロナウイルスはまたたく間に広がり、第二次世界大戦以来、人類が遭遇した最大級の災厄といっても過言ではありません。
 
「銃・病原菌・鉄」で知られる進化生物学者のジャレド・ダイアモンド博士は、「病原体はたびたび人類の歴史を方向付けてきた」と述べる一方、人類の存亡を脅かしたり、経済や生活水準を危機に陥れたりする4つの世界的な脅威があると警告しています。
その脅威とは、「大量の核兵器の爆発」「気候変動」「資源の持続不可能な乱用」「格差がもたらすグローバル社会の不安定化」の4つです。脅威の深刻さはコロナ以上であるとしています。今のコロナ禍に対して世界が国境を越え協働して立ち向かうことができれば、4つの脅威の解決に向けた光明にもなるとする指摘には、私も全く同感であります。

今年は広島と長崎に原子爆弾が投下されて75年の節目の年です。広島大学は、原爆で廃墟となった広島の地に1949年、「自由で平和な一つの大学」を建学の精神として開学しました。平和を希求する精神は今もなお、脈々と引き継がれています。今年8月6日の原爆の日には、6か国12人の学生が平和について討議を重ねた結果を「学生ヒロシマ宣言」として世界に発信しました。
 
 また広島大学は2014年、文部科学省からスーパーグローバル大学(トップ型)13大学の1つに選ばれ、徹底した国際化と大学改革に取り組み、2023年度に向けて実績を積み重ねております。昨年、世界各国から受け入れた海外留学生は通年で約3,000人となりました。私が学長に就任した5年前の1.5倍に増やすとともに、障害のある留学生も受け入れてきました。

 本学は米国アリゾナ州立大学(ASU)と今年7月に新たな覚書を結びました。今月にはアリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院の学士課程、広島大学グローバル校が東広島キャンパス内に設置されます。国立大学が外国大学の海外キャンパスを誘致するのは全国で初めての取り組みであり、文部科学大臣からも力強いエールをいただきました。キャンパスに国内外から学生やASUの教職員が集うことで、さらに国際色豊かなキャンパスに発展することを期待しています。
 
 コロナ禍という嵐の中で入学された皆さんの胸中は、期待と不安が入り混じっていることと思います。しかし、世界を少しでも良くしようという強い意志と熱い情熱を持ち続けていただければ、必ず未来は開けると確信しています。
明日から始まる第3タームでは、授業全体の50%程度を対面で実施できる予定です。「素晴らしい大学で学べてよかった」と思っていただけるように、広島大学は全力で皆さんを応援していくことを約束します。

 あらためまして、ご入学おめでとうございます。

 

令和2(2020)年10月1日
広島大学長 越智光夫


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