研究成果の発表を行う 広島大学放射光科学研究センターの松尾助教 |
記者会見の様子 |
広島大学放射光科学研究センターの松尾光一助教と月向邦彦名誉教授らの研究グループは、本学放射光科学研究センターの放射光円二色性装置を用いて、アルツハイマー病や透析アミロイド症などの原因物質タンパク質の分子間微細構造を、生理的条件下で世界で初めて解明しました。
この研究成果は、平成26年3月20日(木)(日本時間)発行の、アメリカ化学雑誌「Journal Physical Chemistry B」に掲載予定です。
アルツハイマー病などの原因物質であるアミロイド線維は、タンパク質あるいはペプチドが分子間力により集合したもので、結晶・固体状態では原子レベルで研究されています。
しかし生理的環境に近い溶液中の構造については、不明な点が多くあります。
本研究では、透析アミロイド症のヒト由来のタンパク質コアペプチドのアミロイド線維の円二色性を測定し、原子レベルの三次構造情報と分子動力学法を用いて理論的に解析しました。
その結果、水中でのアミロイド線維の形態・毒性を決定するアミノ酸側鎖の微細溶液構造を世界で初めて明らかにしました。
また本研究では、コンピューターによる網羅的計算法を活用しています。これにより、毒性と構造との関連性についての迅速な解析や、分子間微細構造の基盤解析が可能となり、疾患原因タンパク質を中心としたタンパク質の構造・機能研究の新手法としての広い応用が期待されます。
この新手法は、タンパク質だけでなく、ほとんどの生体分子に適用できる画期的な手法です。
今回の成果は、アルツハイマー病、透析アミロイド症、甲状腺随様癌、パーキンソン病など、アミロイド線維が蓄積することで発症する20種類以上の疾患のアミロイド線維形成機構の解明に大きく貢献できるものです。
また、アミロイド線維が引き起こす疾患の新治療法や診断法の開発も期待されます。
【お問い合わせ先】
広島大学放射光科学研究センター
松尾光一 助教
E-Mail:pika*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)