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[研究成果]水素化マグネシウムを使った高容量、低分極電圧な全固体リチウムイオン電池負極材料を開発



水素化マグネシウムを用いた高容量、低分極電圧を示す全固体リチウムイオン電池負極材料を開発

~より高性能の二次電池開発への活用が期待されます~



【ポイント】

● 負極材料に水素化マグネシウム、固体電解質として水素化ホウ素リチウムを利用

● 蓄えられる電気量は、現在多用されているリチウムイオン電池負極材料である黒鉛の約4.4倍

● 分極と呼ばれる充電時と放電時の電圧の差が小さく、充放電サイクルを繰り返しても容量劣化が少ない

模式図

           図 負極特性評価セルの模式図

【概要】

広島大学大学院総合科学研究科の市川貴之准教授を中心とする研究グループは、全固体リチウムイオン二次電池の負極材料として水素化マグネシウムを、また、固体電解質として水素化ホウ素リチウムを利用し、高い性能が得られることを発見しました。これにより、高容量、かつ、低い分極電圧を示す全固体リチウムイオン二次電池の開発につながることが期待されます。

本研究成果は、広島大学先進機能物質研究センターの曾亮(ゼンリャン)特任助教および小島由継教授、同大学大学院先端物質科学研究科 博士課程3年の川人浩司氏と同大学サステナブル・ディベロップメント実践研究センターの宮岡裕樹特任講師との共同研究によるもので、平成27年5月6日発行の英国王立化学会の専門誌『Chemical Communications』のオンライン版で公開されました。なお、本研究成果は高い評価を受け、掲載号の表紙にも選ばれました。

【その成果の優位性と社会や暮らしに及ぼす影響】

現在注目されている二次電池は、モバイル機器や電気自動車に使われるリチウム電池と、太陽電池の出力平準化用途として期待されているNaS電池5)が挙げられます。前者は80℃以下の比較的低温、後者は200℃以上のナトリウムが液化する高温で用いられます。本研究で取り上げる全固体型電池は、液体ではなく120℃程度の温度の固体状態で動作するため安全性が高く、一方、リチウムイオンが伝導するために高い出力を見出せるだけでなく、これまででは得られなかった高いサイクル性能を示し、かつ、充電時と放電時の電圧の差が極めて低いという特徴を持ちます。また、現在利用されているリチウムイオン電池の負極材料である黒鉛と比べると数倍の容量を示すため、より高性能の家庭用電力平準化に用いられる電池としての利用が期待されます。

【論文】

掲載誌:Chemical Communications(材料科学分野で高いインパクトファクター(6.718)をもつ英国王立化学会の化学系専門誌)

論文タイトル:Metal hydride-based materials towards high performance negative electrodes for all-solid-state lithium-ion batteries     (和訳)水素化物を利用した高性能な全固体リチウムイオン電池用負極材料

著者:Liang Zeng(曾亮)、 Koji Kawahito(川人浩司)、 Suguru Ikeda(池田卓)、 Takayuki Ichikawa*(市川貴之)、 Hiroki Miyaokad(宮岡裕樹)、 and Yoshitsugu Kojima(小島由継)

掲載日:2015年5月6日付オンライン版;DOI: 10.1039/C5CC02614H

【お問い合わせ先】

広島大学大学院総合科学研究科

市川 貴之

TEL&FAX:082-424-5744

e-mail:tichi*hiroshima-u.ac.jp(*は@に置き換えて送信してください。)


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