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【研究成果】隕石中に超高圧状態を示す特殊なガーネットを初めて発見 ~小惑星の衝突プロセスや地球深部のマントル物質を探る新たな鍵~



【概要】
国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平朝彦、以下「JAMSTEC」)高知コア研究所の富岡尚敬主任技術研究員、伊藤元雄主任技術研究員、及び国立大学法人広島大学大学院理学研究科の宮原正明准教授からなる研究グループは、母天体における衝突により高温高圧を経験した隕石中に、超高圧でしか形成されない特殊なガーネットを世界で初めて発見しました。

地球の地殻やマントルには、マグネシウムに富む(MgSiO3成分に富む)輝石というケイ酸塩鉱物が豊富に含まれています。MgSiO3輝石は16-22万気圧の圧力、1,600-2,400℃の温度で「正方晶ガーネット」と呼ばれる輝石より密度の高い結晶構造に鉱物転移することが、1980年代半ばの高温高圧合成実験により知られていました(Kato and Kumazawa, 1985)。しかし、天然の岩石中に正方晶ガーネットが見つかった例はこれまではありませんでした。

そこで研究グループは、1879年にオーストラリアに落下した隕石に含まれる、衝撃で変成した部分を、JAMSTEC高知コア研究所が所有する超高空間分解能の透過電子顕微鏡を用いて詳細に解析しました。その結果、MgSiO3組成に富む正方晶ガーネットを世界に先駆けて同定し、その存在を明らかにしました。さらに、このガーネットの生成条件は圧力17-20万気圧、温度1,900-2,000℃、衝撃後の冷却速度は1,000℃/秒以上であると推定しました。

今回発見された正方晶ガーネットは、小天体の物性や相互の衝突速度など初期太陽系プロセスを探る重要な鍵をにぎるほか、地球内部のマントルにも存在する可能性があり、マントルの物性を解き明かす上で大きな役割を担うことが期待されます。研究グループでは、今後、ケイ酸塩鉱物からなる様々な種類の石質隕石について超高圧鉱物とその周辺の鉱物の衝撃組織や元素分布を詳しく分析し、小惑星の表層環境変化を調べる研究を進める予定です。

本成果は米国国科学振興協会(AAAS)が発行する科学誌「Science Advances」に3月26日付(日本時間)で掲載されます。なお、本研究はJSPS科研費15H03750の助成のもとJAMSTEC高知コア研究所と広島大学大学院理学研究科との連携協定の一環として行われました。

【論文に関する情報】
<タイトル>
「Discovery of natural MgSiO3 tetragonal garnet in a shocked chondritic meteorite」

<著者>
富岡尚敬1、宮原正明2、伊藤元雄1
1. 国立研究開発法人海洋研究開発機構 高知コア研究所
2. 国立大学法人広島大学大学院理学研究科 地球惑星システム学専攻

<掲載雑誌>
Science Advances(3月26日03時(日本時間)公開)

<DOI番号>
DOI: 10.1126/sciadv.1501725

ガーネットの結晶構造


テンハム隕石中の正方晶ガーネットの粒子集合体の透過電子顕微鏡(TEM)写真。
母岩中の輝石(化学組成はMgSiO3)が高温高圧下で固体のまま相転移(高密度化)して形成されたもの。
(提供:Tomioka et al. Science Advances. 2016)

 

【お問い合わせ先】
広島大学大学院理学研究科 地球惑星システム学講座
准教授 宮原 正明
TEL:082-424-7461
E-mail:miyahara*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えてください)


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