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【研究成果】がん関連タンパク質が神経シナプス結合の調節をしていることを発見 - ショウジョウバエ幼虫の運動神経を用いて証明 –



広島大学大学院理学研究科生物科学専攻の千原崇裕教授らの研究グループは、ショウジョウバエを用いた研究により、がん関連タンパク質であるStrip、Hippoが神経シナプス結合を調節していることを発見しました。さらに、Strip、Hippoタンパク質は神経シナプス内のアクチン細胞骨格に作用することで神経シナプスに影響を与えていることも突き止めました。

本研究成果は、8月18日午後0時(米国東部標準時間―日本時間19日午前1時)に「Cell Reports」オンライン版に掲載されました。
(DOI番号:10.1016/j.celrep.2016.07.066)

本研究は、東京大学大学院薬学系研究科(三浦正幸教授、佐久間知佐子研究員、および当時の大学院生斎藤佳絵さん、梅原智輝さん)、東京都医学総合研究所(前田信明プロジェクトリーダー、神村圭亮研究員)、スタンフォード大学生物学科(Timothy J. Mosca研究員)との共同研究による成果です。

【本研究成果のポイント】

  • 神経シナプスのかたちと機能を調節する分子としてStripタンパク質を見出しました。
  • Stripは、がん抑制タンパク質として知られるHippoタンパク質の活性を抑制することで神経シナプスを調節していました。
  • Strip、Hippoタンパク質は共にヒトにも存在するため、神経の形づくりに関わる基本的な仕組みや、神経関連の遺伝病などの発症機序の理解に繋がることが期待されます。


図1:ショウジョウバエ幼虫の神経筋接合部
(A)ショウジョウバエ幼虫の運動神経は各体節表面の骨格筋へ軸索を伸長し、シナプス結合している。運動神経の終末部位には“ブートン”と呼ばれるこぶ状の構造がある。右端の写真は運動神経の軸索のみを染め出すことでブートン構造が連なっている様子が分かる。(B)シナプスブートンの模式図。ブートン内には神経伝達物質を含んだシナプス小胞が存在する。(C)運動神経におけるStripタンパク質の量を減らすと(ノックダウン)、小さなブートン(サテライトブートン)が過剰に作られる。

 


図2:Strip, Hippoタンパク質による神経シナプス制御のモデル図
Stripタンパク質(紫色)はブートン内に存在する。神経に何かしらの刺激が入ることにより、Stripタンパク質が局所的に消失し、代わりにその部分でHippoタンパク質が活性化する(青色)。局所的に活性化したHippoタンパク質はアクチン制御因子Enabled(緑色)を介してアクチン細胞骨格の重合度合いを制御し、最終的にシナプス構造と機能に影響を及ぼす。
 

【お問い合わせ先】
大学院理学研究科 生物科学専攻 細胞生物学研究室
教授 千原崇裕
Tel:082-424-7443 FAX:082-424-0793
E-mail:tchihara*hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えて送信してください)


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