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【研究成果】神経細胞膜のresonance特性に関わるイオンチャネルを解明



【研究のポイント】
・ある種の神経細胞には、サイン波状の周期的な膜電位変化を示す特徴があり、この発現には神経細胞膜の特定のイオンチャネルが関与することが分かった。
・神経細胞が刻むリズムに影響を与えるイオンチャネルの発見により、この神経細胞のリズムがどの生体リズムに影響を与えるかを解明することが期待できる。

脳内のある種の神経細胞には、周期的な変化を示すサイン波状の膜電位振動(周期的膜電位オシレーション)を示す特徴があり、脳内の信号処理などに重要な関与をしていると考えられています。オシレーションの発現には、神経細胞膜のイオンチャネル(*1)が必須と考えられていますが、関与するイオンチャネルの種類や機能については不明な点が多くあります。

科学研究費補助金、脳科学研究戦略推進プログラムのサポートを受け、広島大学大学院医歯薬保健学研究院基礎生命科学部門の橋本浩一教授(神経生理学)と大学院生の槇殿佳子の研究グループは、北海道大学、福島県立医科大学、東京大学、新潟大学との共同研究により、オシレーションの基盤と考えられている、細胞膜の電気的特性である「resonance特性」に関与するイオンチャネルを解析しました。その結果、神経細胞膜のresonance特性にhyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channel 1(HCN1)(*2)と、電位依存性Ca2+チャネル(*3)の一種であるCav3.1チャネルが共同的に働くことが必須であることを明らかにしました。

この発見により、細胞が持つ周期的膜電位オシレーションの機能的意義の解明がさらに進むことが期待されます。

本研究成果は、2016年7月14日 12 p.m.(アメリカ東部標準時間(EST))Cell Reports 2016で公開されました。

【参考図】

【論文に関する情報】
<論文タイトル>
Ionic basis for membrane potential resonance in neurons of the inferior olive

<著者名>
Yoshiko Matsumoto-Makidono, Hisako Nakayama, Miwako Yamasaki, Taisuke Miyazaki, Kazuto Kobayashi, Masahiko Watanabe, Masanobu Kano, Kenji Sakimura, and Kouichi Hashimoto*
*Corresponding Author(責任著者)

<DOI番号>
DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.06.053

【用語解説】
(*1)イオンチャネル:細胞の生体膜(細胞膜や内膜など)にある膜貫通タンパク質の一種で、細胞膜に受動的にイオンを透過させる孔を形成するタンパク質の総称である。

(*2)hyperpolarization-activated cyclic nucleotide-gated channel 1(HCN1):膜電位がマイナス方向に変化した時に開口する特殊なイオンチャネル

(*3)電位依存性Ca2+チャネル:膜電位の変化に応答して開口しCa2+を透過するイオンチャネル

 

【お問い合わせ先】
広島大学大学院医歯薬保健学研究院 基礎生命科学部門 医学分野 神経生理学
教授 橋本 浩一(はしもと こういち)
Tel/Fax:082-257-5125
E-mail:hashik*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)


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