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【研究成果】トポロジカル近藤絶縁体の特異な2次元電子状態を発見 ― 次世代半導体素子の省エネルギー化やスピントロニクス素子実現に一歩近づく成果 ―



【本研究成果のポイント】
■電子間の多体効果により半導体※1となる近藤絶縁体※2である12硼化イッテルビウムYbB12単結晶の表面を原子1個レベルで平坦化・清浄化※3し、この物質がトポロジカル近藤絶縁体(TKI)※4となっていることを発見。
■TKIの候補物質は1種類のみが知られていたが、本研究により、新たな候補が出現した。
■次世代の半導体素子における無散逸電流※5による省エネルギー伝導やスピントロニクス技術等への応用に役立つと期待される。

大阪大学大学院理学研究科の萩原健太氏(修士2年)、生命機能研究科の大坪嘉之助教、木村真一教授、自然科学研究機構分子科学研究所の田中清尚准教授、Synchrotron SOLEIL(仏)のAmina Taleb(アミナ・タレブ)博士、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所の組頭広志教授、広島大学放射光科学研究センターの奥田太一准教授、茨城大学理学部の伊賀文俊教授らの研究グループは、希土類ホウ化物YbB12の単結晶表面を原子1個レベルで平坦化・清浄化する技術を開発し、その表面電子状態を電子スピンや軌道対称性を分けて測定した結果、この物質が理論的に予測されていたトポロジカル近藤絶縁体(TKI)と呼ばれる状態であることを発見しました。この研究は、無散逸電流による省エネルギーデバイスやスピントロニクス技術への応用に役立つと考えられます。

本研究成果は8月31日(水)18時(日本時間)にNature Publishing Group「Nature Communications」(オンライン版)で公開されます。

【参考図】

【論文に関する情報】
<タイトル>
Surface Kondo Effect and Non-Trivial Metallic State of the Kondo Insulator YbB12

<掲載雑誌>
Nature Communications (英国 Nature Publishing group)

<DOI番号>
DOI:10.1038/ncomms12690

【用語解説】
※1 半導体
電子の詰まっている状態(価電子帯)と空席のある状態(伝導帯)の間に有限のエネルギー差(バンドギャップ)が存在する物質。そのため、バンドギャップを越えるような励起の無い状況では電流を流さない。

※2 近藤絶縁体
高温相では金属だが、低温で結晶中の電子同士の相互作用(電子相関)によりバンドギャップが形成されて絶縁体へと転移する物質の1種。電子相関の種類(近藤効果※7)から近藤絶縁体と総称される。

※3 清浄化
結晶の表面は大気中から吸着した酸素や水分子、あるいは結晶の作製・破断時に付着した油脂などにより汚染されており、そのままでは純粋な結晶表面に現れる物理現象を観察することができない。そこで本研究では、大気圧の10の13乗分の1程度という超高真空環境で加熱等を行うことにより、上記のような汚染を排除した純粋なYbB12結晶表面を作製し、その電子状態の観察を行った。

※4 トポロジカル近藤絶縁体(TKI)
近藤絶縁体の伝導帯及び価電子帯を構成する電子の対称性が通常の絶縁体とは反転していた場合に実現するとされる電子状態。結晶表面には必ずトポロジカル表面状態※6を持つために電気伝導性があり、しかもその性質が電子相関により保持されることから、様々な特異な物理現象が理論的に予測されている。

※5 無散逸電流
通常の固体の中を流れる伝導電子は、結晶の不純物や原子欠陥等によって散乱を受ける。これが電気抵抗の原因となるのだが、後述のTSSを介して伝導する電子はこのような散乱を起こさないことが予想されている。そのため、ジュール熱の発生等によるエネルギー損失を非常に少なくした省エネルギーデバイスが実現可能になると期待されている。

※6 トポロジカル表面状態(TSS)
トポロジカル絶縁体の表面に必ず現れるとされる電子状態。伝導帯・価電子帯間のバンドギャップを横切るような分散関係を持つために常に電気伝導性があり、さらに電子伝導方向に依存したスピン・軌道角運動量偏極構造を持つ等、応用面で魅力的な性質を多く持つ。

※7 近藤効果
純粋な金属は、温度を下げていくとその電気抵抗も減少するが、金属中に非常に低い濃度の磁性を持った不純物(鉄やニッケルなど)が存在する場合、ある温度以下で電気抵抗が温度の低下に対し増加する現象が見られる。この現象は古くから知られていたが、その物理的機構を1964年に近藤淳博士が初めて理論的に解明したことから、この名前が付けられている。

【お問い合わせ先】
広島大学 放射光科学研究センター
准教授 奥田 太一(おくだ たいち)
TEL:082-424-6996 
FAX:082-424-6294
E-mail: okudat*hiroshima-u.ac.jp(注:*は半角@に置き換えてください)

 


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