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【研究成果】温泉でくつろぐ日本のオタマジャクシ:湯の中でも生きられるカエルの幼生



日本には、水温46.1度にも達する温泉に生息し成長するオタマジャクシがいます。温泉の中で生息することは、オタマジャクシの免疫システムに効用があり、その成長を促進し、淡水源の少ない小さな火山島での生存を可能にしているのかもしれません。

同種のカエルのオタマジャクシが、台湾や日本列島にあるいくつかの温泉に生息していることは以前より知られていました。しかし、今回の調査で、このオタマジャクシは両生類の幼生として、これまで記録された中で最高温度の温泉で生息していることがわかりました。この研究は広島大学と総合研究大学院大学の研究者たちによって行われたものです。

日本の温泉は年中、地元の人々や観光客で賑わっており、公衆浴場の施設内に設けられた風呂はくつろぎの場となっています。一方、研究者たちがこのオタマジャクシを見つけた場所は、長崎から真南へ約310キロメートルの東シナ海上に浮かぶ、亜熱帯の小さな島、口之島の森の中にある浅い泥沼です。

今回の研究の最終著者である広島大学の井川武助教・博士(理学)によれば、「(進化論の)ダーウィンやウォレスの時代以来、科学者たちは生物の分布とその環境適応に関する研究を続けています。我々の報告は、動物が多様な環境条件に対して見せる生理的適応力と、多様な地理的場所への定着、その二つの直接的なつながりを示す好例の一つ」と言えるそうです。

今回の研究対象となったのは、リュウキュウカジカガエル(学名:Buergeria japonica)です。このカエルは、日本の南西部に位置する火山群島から成るトカラ列島に生息する唯一の在来種両生類です。他の両生類にとって温か過ぎる湯の中でも生存できるように、このカエルは適応しました。そして、その新しい生息環境をうまく利用することで、他種との生存競争を避けることができたのです。将来の研究では、この環境でのオタマジャクシの生態をつまびらかにすることが焦点となっていきます。

井川助教は「2013年6月に行った現地調査の際に、セランマ温泉にいるオタマジャクシに気づきました。このオタマジャクシを研究するため、2015年9月に同じ場所を訪れたのです。私たちが研究の目標としているのは、動物の生息環境への適応進化の過程を理解すること」と語っています。

セランマ温泉ではカエルの成体は見つかっていません。したがって、カエルの一生のうちで初期幼生の段階、つまりオタマジャクシの間だけ、高温に適応しているのかもしれません。

リュウキュウカジカガエルの成体は、通常、陸上で生活しています。ごつごつした皮膚をもち、体長は約3センチで、オスよりもメスのほうが大きくなります。蛇や鳥類などが天敵です。IUCN(国際自然保護連合)が作成した絶滅危惧種一覧(レッドリスト)に登録されています。

(文責:Caitlin E. Devor 翻訳:三代川典史)

温泉に生息するオタマジャクシ
日本にある口之島には、水温46.1度にも達する温泉に生息し成長するオタマジャクシがいます。広島大学による研究では、環境条件への生理的適応力と広域の地理的範囲に分布できる能力との直接的な関連性を示しています。
(小巻翔平の提供による画像 。 著作権の帰属を明示の場合のみ使用可。)

外部資金:
この研究は、日本学術振興会の特別研究員への助成金と、広島大学教育研究支援財団による助成金による支援を受けています。

原著論文:
Komaki S, Lau Q, Igawa T. 2016. Living in a Japanese onsen: field observations and physiological measurements of hot spring amphibian tadpoles, Buergeria japonica. Amphibia-Reptilia. DOI: 10.1163/15685381-00003052.

【お問い合わせ先】
広島大学研究企画室 三代川典史
pr-research*office.hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

小巻翔平
cynops00pyrrhogaster*gmail.com (注:*は半角@に置き換えてください)


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