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【施設紹介】ゴボウ、レタス、ヨモギ・・・みんなキクの仲間

国際生物多様性の日(5月22日)にちなみ、世界最大レベルを誇る広島大学の野生ギクのコレクションを紹介します。

キク科は植物の中でも最も繁栄している科の一つです。世界ではおよそ23,000種もあり、日本には約250種があります。レタスやゴボウなど身近な野菜もキク科の仲間です。広島大学大学院理学研究科附属植物遺伝子保管実験施設では、キク科の中でも野生のキクを中心にキク属とその近縁属に関して豊富なコレクション(約70種)を持っており、その中には日本固有種に加え、中国等の海外原産の種や絶滅の懸念のある種が含まれています。

日本原産の野生ギク

例えば、「ナカガワノギク」は白花でくさび形の葉を持つ特徴的な種ですが、四国の那賀川流域にしか自生していません。

ナカガワノギク

皆さんが「キク」と聞いて思い浮かべるのは栽培ギクです。栽培ギクはキク属の代表格と言える植物種ですが、研究に適さないいくつかの問題があります。

栽培ギク

そこでこの施設では、キクタニギクという野生ギクの突然変異系統を材料に、研究に適した我が国独自のモデル系統を開発しました。キク属は株での保存が主流ですが、この系統は種(タネ)で繁殖させることが容易などの特性があり、純系化していることから遺伝子レベルでの解析に最適です。この施設では、この系統を用いて種による形や性質の違いを生む遺伝子の解析などのほか、全ゲノム塩基配列の決定などを行っています。また、モデル系統を含めこれらのコレクションを研究者に提供することで、栽培ギクの改良や薬の開発などの研究展開にひと役買っています。

キクは異なる種の間でも交雑しやすいため、一部の種は純粋性が失われる(遺伝子浸透)という意味での絶滅も心配されています。この施設の貴重な材料は、系統ごとに鉢植えで栽培することなどで維持され、キクの多様性を遺伝子レベルで研究することなどに用いられていますが、将来展開されるであろう研究あるいは種の保全のためにも次の世代に引き継がれていきます。

 

Chrysanthemum morifolium                                                    
栽培ギク

一般的にキクと言えば栽培ギクのことを指す。人の手により様々な花の形に育種されているが、もともとは普通のキク属の花の形(例えばキクタニギク)をしていた。六倍体で自家不和合性(自分の花粉を受粉させても種が取れない)のため、研究材料としては適さない。

 

Chrysanthemum seticuspe
和名:キクタニギク

写真はこの施設で開発したキク属研究用モデル系統。キクタニギクは二倍体であるが、その自家和合性系統を自殖により純系化したもの。全ゲノム塩基配列決定などにも有用である。

 

Chrysanthemum makinoi
和名:リュウノウギク

二倍体の日本固有種。白い比較的大きな花をつける。学名は牧野富太郎博士から取られた。

 

Chrysanthemum indicum
和名:シマカンギク

日本・中国に分布する黄花系の種。栽培ギクの起源は未だ解明されていないが、雑種由来と考えられ、シマカンギクもその起源種候補のひとつでもある。

 

Chrysanthemum yoshinaganthum
和名:ナカガワノギク

四国の那賀川流域にのみに自生する白花種。栽培ギクとの交雑による遺伝子汚染が心配されている。白花で葉が細いのが特徴。

 

Chrysanthemum pacificum
和名:イソギク

花の最も外側に長い花びらがない無舌状花系の日本固有種。葉が白く縁どりされているようで美しいことから、時々観賞用にも販売されている。

 

Chrysanthemum nematolobum
中国原産のキク属種

花はイソギクと同様に無舌状花。葉が葉脈しかないように見えるほど細い。こんなに形態が違ってもキクタニギクと交雑可能であり、子孫ができる。

 

【この記事に関するお問い合わせ先】
広島大学広報グループ
Email: koho*office. hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に変換して送信してください)


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