<研究に関すること>
広島大学原爆放射線医科学研究所 血液・腫瘍内科研究分野
教授 一戸 辰夫
Tel:082-257-5861 FAX:082-256-7108
E-mail:nohe*hiroshima-u.ac.jp(*は半角@に置き換えてください)
<報道に関すること>
広島大学 財務・総務室広報部 広報グループ
坂本 晃一
TEL: 082-424-6762 FAX: 082-424-6040
広島大学原爆放射線医科学研究所の川瀬孝和助教、美山貴彦大学院生、一戸辰夫教授らの研究グループは、ウイルスに対して高い免疫応答性を示すCD8陽性T細胞は(注1)、ウイルスを認識するために、異なった個人の間で共有されているT細胞レセプター(共有TCR)(注2)を利用していることを解明しました。また、このような「共有TCR」は、長期免疫記憶を担う「幹細胞様メモリーT細胞」(注3)において特に高い頻度で利用されていることを明らかにしました。従来、異なった個人の間で、それぞれがもつ多数のTCRの共通性を比較することは困難でしたが、本研究は、国立病院機構相模原病院臨床研究センター、富山大学医学薬学研究部との共同研究により、次世代シーケンサー(注4)を用いてTCR遺伝子の配列を大量に取得するとともに、ウイルスを認識するTCRを単一細胞のレベルで決定し、「共有TCR」を見出す新しい解析技術の開発によって実現しました。
今回の結果は、多数のT細胞の中から特に強い免疫応答力を持つものを選び出す手掛かりとなり、感染症やがんに対する細胞免疫療法の臨床開発に大きく貢献することが期待されます。
この研究成果は、ロンドン時間の2017年6月16日午前10時(日本時間:2017年6月16日午後6時)に、英国科学雑誌「Scientific Reports」オンライン版に掲載されました。
用語解説
注1)CD8陽性T細胞:
細胞の表面にCD8と呼ばれるタンパク質を発現し、病原体に感染した細胞やがん細胞に対する細胞傷害機能をもつT細胞(キラーT細胞)。
注2)T細胞レセプター(TCR):
T細胞がさまざまな異物(抗原)を見分け、それらに結合するための細胞表面タンパク質。
注3)幹細胞様メモリーT細胞:
組織幹細胞と同様に自己複製能が高く、長い寿命を持ち、他のメモリーT細胞の供給源となる細胞。T細胞には、機能的に異なるさまざまな亜集団があり、メモリーT細胞は、一度遭遇した抗原に対する「免疫の記憶」を担う細胞。その中でも、幹細胞様メモリーT細胞は免疫記憶の長期間の維持に関与していると考えられている。
注4) 次世代シーケンサー:
DNAやRNAの遺伝子配列を、高速で大量に解読する装置。
川瀬孝和助教(右)・美山貴彦大学院生(左)
「今回の研究では、ウイルス抗原に対する免疫応答性が高いT細胞はランダムに選択されているのではなく、異なった個人間で共有されているT細胞受容体(共有TCR)を発現しているクローンの中から選ばれやすいことが明らかとなりました。今後は、がん細胞に対して強い反応性を示すTCRを見つけるために、特に幹細胞様メモリーT細胞分画に含まれる共有TCRの特徴をさらに詳しく解析していきたいと考えています。」
一戸 辰夫 教授
<研究に関すること>
広島大学原爆放射線医科学研究所 血液・腫瘍内科研究分野
教授 一戸 辰夫
Tel:082-257-5861 FAX:082-256-7108
E-mail:nohe*hiroshima-u.ac.jp(*は半角@に置き換えてください)
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広島大学 財務・総務室広報部 広報グループ
坂本 晃一
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掲載日 : 2017年06月19日
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