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【研究成果】生まれたばかりの初期銀河は、予想よりも激しく活動していた

広島大学大学院理学研究科のノルベルト ワーナー氏ら国際研究チームは、日本のX線天文衛星「すざく」の観測データを解析することにより、多くの銀河団において鉄が銀河団を満たす高温プラズマの中で外縁部まで同じように存在していることを突き止めました。それにより、銀河団中の鉄は、銀河団が形成されるよりもずっと前に起源をもつことが示唆されます。

この結果は、チェコのプラハで行われているヨーロッパ天文学会において発表されました。

ノルベルト ワーナー氏は、広島大学の特任准教授であり、チェコのMasaryk大学、ハンガリーのMTA-Eotvos大学にも所属しています。

宇宙に存在する元素のうち、水素とヘリウムは宇宙最初のビッグバンによって主に生成されたと考えられています。一方、それより重い炭素、酸素、珪素、鉄などの元素は、宇宙の進化ともに形成された銀河の中の星の中で、核融合によって生成されたと考えられています。

しかし、そうした重い元素がどのように宇宙全体に広がったのかは定かではありませんでした。

研究チームは、10個の近傍銀河団を調べ、すべての銀河団において、高温プラズマ中の鉄の含有量が太陽の1/3でそろって分布していることを示しました。

この結果は、約100億年前に銀河団が形成されたよりも前に、宇宙の中で鉄が作られて銀河間空間にばらまかれたことを示唆します。こうした鉄などの元素は、初期銀河の中の星の核融合で生成され、早い段階で非常に多数の超新星爆発によって銀河の外に撒き散らされたと考えられます。

もし、これらの重い元素が比較的最近生成されたとすると、その分布は銀河団ごとに異なると考えられるが、観測結果はそうなっていませんでした。

以上の結果は、国際学術雑誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyで発表されました。

近傍銀河M82の合成写真:M82は、爆発銀河とも呼ばれ、現在多数起こりつつある超新星爆発が作り出した銀河風と呼ばれる激しい流出が観測されている銀河です。宇宙初期には、これよりも激しい銀河が多数存在していたと考えられます。

図の右上がりに光っている部分がハッブル望遠鏡による可視光画像で、それに対して垂直方向に吹き出ているように見えるのチャンドラ衛星によるX線画像(青色)およびでSpitzer衛星による赤外線画像(赤色)です。銀河風がX線や赤外線で光っているのが見えているものです。

Credit: NASA/JPL-Caltech/STScI/CXC/UofA/ESA/AURA/JHU

お問い合わせ先

大学院理学研究科教授 深澤 泰司
TEL: 082-424-7380


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