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本研究成果のポイント
- 同じ遺伝子型でも環境に応じて異なる2つの形態をとる線虫において神経機能を解析する手法を確立しました。
- 神経伝達物質であるセロトニンが線虫の捕食行動の際に必要な歯と筋肉の動きの協調性に必要であることを明らかにしました。
- セロトニンを合成している一部の神経細胞が捕食行動の制御過程に重要であることを解明しました。
概要
広島大学大学院理学研究科生物科学專攻の奥村美紗子助教、マックスプランク研究所(ドイツ)のRalf J Sommer教授らの研究グループは、線虫を食べる線虫Pristionchus pacificusの捕食行動を制御するセロトニン神経回路機構を解明しました。
線形動物(線虫)の一種であるPristionchus pacificus (P. pacificus)は2つの口の形のパターンが存在し、その形態によって摂食行動の違いがみられます。一方の個体は、歯を動かすことによって他の線虫に対する捕食行動を示しますが、もう一方の個体は捕食行動をすることはありません。このような行動の違いがどのように制御されているかを明らかにするために、今回の研究ではゲノム編集技術を用いて変異体を作成し、さらに遺伝学的な細胞除去法を用いることで、P. pacificusにおいて神経機能の解析を行う方法の確立を行いました。実際にこれらの方法を用いて捕食行動がどのように制御されているかを解析し、神経伝達物質であるセロトニンやセロトニンを産生する神経細胞が歯や筋肉の動きの同調を制御しており、効率的な捕食行動に必要であることを明らかにしました。
本研究成果は、アメリカ遺伝学会学会誌「G3: Genes, Genomes, Genetics」オンライン版に2017年11月1日に掲載されました。
論文情報
- 論文タイトル: Serotonin drives predatory feeding behavior via synchronous feeding rhythms in the nematode Pristionchus pacificus
- 著者: Misako Okumura1,2, Martin Wilecki1, Ralf J Sommer1
1. Max-Planck Institute for Developmental Biology, Department for Evolutionary Biology
2. 広島大学大学院 理学研究科 生物科学專攻 細胞生物学專攻 - 掲載雑誌: G3: Genes, Genomes, Genetics
- DOI番号: https://doi.org/10.1534/g3.117.300263
- 報道発表資料(718.16 KB)
- 論文掲載ページ(G3: Genes, Genomes, Geneticsページに移動します)
- 広島大学研究者総覧(奥村美紗子 助教)
- 広島大学大学院理学研究科 生物科学專攻 細胞生物学研究室
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広島大学大学院理学研究科 生物科学專攻 細胞生物学研究室
助教 奥村美紗子