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【研究成果】がん細胞に関連する環状染色体の維持に関わる新規因子を発見 -新しい作用機構を持つ抗がん剤の開発に期待-

本研究成果のポイント

  • がん細胞と似た特徴を持たせた酵母細胞を用いることで、環状染色体の維持に関わる新しい因子を発見しました。
  • ある種のがん細胞は高い頻度で環状染色体を持つため、本発見は環状染色体をもつがん細胞を選択的に死滅させる抗がん剤の開発につながることが期待できます。

概要

広島大学大学院先端物質科学研究科の上野勝准教授のグループは、酵母を用いた研究により、環状染色体の維持に必要な新規因子を発見しました。その因子は、染色体パッセンジャー複合体という因子で染色体分配などで働くことがわかっていましたが、環状染色体の維持に必要かどうかは全くわかっていませんでした。ある種のがん細胞は高い頻度で環状染色体を持っています。本研究成果は、環状染色体をもつがん細胞を選択的に死滅させる方法の開発に道を開きました。

本研究成果は、 アメリカ東部標準時間の2018年1月3日午後2時(日本時間2018年1月4日午前4時)に、米国オンライン科学誌 「PLOS ONE」オンライン版に掲載されました。

(a) 線状染色体を持つ酵母細胞は、染色体パッセンジャー複合体の機能が少し低下した場合でも、娘細胞に染色体(姉妹染色分体)が均等に分配され正常に細胞が分裂します。

(b)環状染色体を持つ(がん細胞と似た特徴を持たせた)酵母細胞で、染色体パッセンジャー複合体の機能が少し低下した細胞では、環状線色体の分配が正常に行われず、染色体が均等に分配されない状態で、細胞壁が形成されます。その結果、細胞が正常に分裂できず死滅します。染色体パッセンジャー複合体の機能が少し低下した場合でも、線状染色体が正常に分配される酵母の顕微鏡写真(図左端)と、染色体パッセンジャー複合体の機能が少し低下したことで環状染色体が正常に分配されない時の酵母の顕微鏡写真(図右端)を、それぞれ図の左端と右端に示しました。核に存在するタンパク質に赤い蛍光タンパク質をつなぐことで核を可視化しました。

上野 勝 准教授からのコメント 

ヒトの環状染色体は、がんや遺伝病と密接に関係していますが、染色体が環状になることの影響はあまりわかっていません。環状染色体の特徴を調べることで、新しいがんの治療法の開発や染色体の働きについての新たな発見につなげたいと思っています。

論文情報

  • 掲載雑誌: PLOS ONE
  • 論文題目: Chromosome Passenger Complex is required for the survival of cells with ring chromosomes in fission yeast
  • 著者: Ahmed G.K. Habib, Kanako Sugiura and Masaru Ueno*
    *Corresponding author(責任著者)
  • doi: 10.1371/journal.pone.0190523
【お問い合わせ先】

広島大学大学院先端物質科学研究科 
健康長寿拠点・クロマチン動態数理研究拠点
准教授 上野 勝

TEL: 082-424-7768
FAX: 082-424-7768
E-mail: scmueno*hiroshima-u.ac.jp(*は半角@に置き換えてください) 


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