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本研究成果のポイント
- 再生可能な動物において観察される、切断位置に応じて細胞増殖が変化する「再生の位置記憶(Positional Memory)」は、特異的アミノ酸(ロイシン・グルタミン)シグナルを介して再生を制御している事を見出しました。
- ロイシン・グルタミンが、アミノ酸輸送体→液胞型プロトンポンプ(V-ATPase)※3によるリソソーム※1の酸性化を経てmammalian Target of Rapamycin Complex 1 (mTORC1)※2を活性化させ、細胞増殖を制御していることを明らかにしました。
- 本研究の成果は、今後の再生医療における組織・器官の大きさの制御への貢献が期待されます。
概要
再生可能な動物は、傷ついた組織・器官を元の状態(大きさ・形状)に戻すことが出来ます。傷ついた組織・器官を元の状態に戻すためには、切断位置に応じて細胞増殖が精密に制御されることが重要です。すなわち、深く傷ついた場合には細胞増殖が高くなり、浅く傷ついた場合には細胞増殖が低くなります(図1)。再生可能な動物には、組織・器官の細胞内に、この様な位置の記憶(Positional Memory)が存在すると考えられていますが、その実体や制御機構はほとんど明らかにされていませんでした。
広島大学大学院理学研究科 菊池裕教授らの研究グループは、再生可能な小型熱帯魚ゼブラフィッシュの尾ビレ再生をモデル実験系として、Positional Memoryの解析を行いました。その結果、ロイシン・グルタミンが、アミノ酸輸送体→液胞型プロトンポンプ(V-ATPase)によるリソソームの酸性化を経てmammalian Target of Rapamycin Complex 1 (mTORC1)を活性化させ、細胞増殖を制御していることを明らかにしました(図2)。
【用語の解説】
※1 リソソーム:真核生物が持つ細胞小器官。
※2 mammalian Target of Rapamycin Complex 1 (mTORC1):細胞内シグナル伝達に関与するタンパク質キナーゼ。複合体1と2の2種類存在する。細胞増殖に機能する。
※3 液胞型プロトンポンプ(V-ATPase):ATPの加水分解エネルギーを利用して水素イオンを膜輸送するタンパク質。活性化することでリソソーム内の酸性化を促進するはたらきがある。
(図1)
(図2)
論文情報
- 掲載雑誌: 英国科学誌 Scientific Reports(オンライン版)
- 論文題目: Leucine/glutamine and v-ATPase/lysosomal acidification via mTORC1 activation are required for position-dependent regeneration
- 著者: Kazuya Takayama, Akihiko Muto, and Yutaka Kikuchi
- DOI番号:10.1038/s41598-018-26664-2
- 報道発表資料(458.34 KB)
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広島大学大学院理学研究科生物科学専攻発生生物学研究室
教授 菊池 裕