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【研究成果】ゲノム編集における不確実性を改善し、効率を上昇させる新技術(LoADシステム)を開発 ~疾患モデル細胞の作製やゲノム編集治療への応用に期待~

本研究成果のポイント

  • ゲノム編集ツールの一つであるCRISPR-Cas9を改良し、狙い通りのゲノム編集が施される確率を上げる新技術(LoADシステム)を開発しました。
  • LoADシステムを用いることで、さまざまな細胞での遺伝子挿入の効率を約2倍に高めることに成功しました。
  • 効率化した遺伝子挿入法により、3箇所の異なるゲノム領域に対する同時遺伝子挿入を実現しました。

概要

広島大学大学院理学研究科 山本 卓 教授および 佐久間 哲史 講師らは、東京医科歯科大学 田中 光一 教授および 相田 知海 准教授と共同で、ゲノム編集(※1)における不確実性を改善し、効率を上昇させる新技術(LoADシステム)を開発しました。本技術によって、CRISPR-Cas9(※2)を用いた遺伝子改変において、狙い通りの改変結果が得られる確率が高まり、従来技術では困難であった複数領域への同時遺伝子挿入などが可能となることが示されました。本技術は、さまざまなゲノム編集細胞の作製効率を大きく向上させることから、遺伝性疾患のモデリングや、自家移植によるゲノム編集治療のための疾患変異の修復などに役立てられることが期待されます。

本研究成果は、英国Nature Publishing Groupの科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。

2018年8月21日、本件について、キャンパス・イノベーションセンター(東京都)において記者説明会を行いました。

【用語説明】
※1 ゲノム編集
標的とするゲノムDNA領域に対してDNA二本鎖切断(DSB)を誘導し、その修復過程において、標的領域への欠失や挿入変異を導入(遺伝子ノックアウト)したり、ドナーベクターのゲノムDNAへの組み込みを促進することで遺伝子を挿入(遺伝子ノックイン)したりする最先端の遺伝子改変技術。

※2 CRISPR-Cas9
Clustered regularly interspaced short palindromic repeats- CRISPR associated protein 9の略で、ゲノム編集を可能にする人工DNA切断酵素の一つ。Cas9と呼ばれるタンパク質がsgRNA(Single-guide RNA)と複合体を形成し、標的DNA配列を認識して切断する。

論文情報

  • 掲載雑誌: Nature Communications
  • 論文題目: Biased genome editing using the local accumulation of DSB repair molecules system
  • 著者: Shota Nakade1, Keiji Mochida2, Atsushi Kunii1, Kazuki Nakamae1, Tomomi Aida3, Kohichi Tanaka3, Naoaki Sakamoto1, Tetsushi Sakuma1* & Takashi Yamamoto1*
    1) 広島大学大学院理学研究科
    2) 元広島大学大学院理学研究科
    3) 東京医科歯科大学
    *: 責任著者
  • DOI: 10.1038/s41467-018-05773-6
【お問い合わせ先】

広島大学大学院 理学研究科 数理分子生命理学専攻
教授 山本 卓
TEL: 082-424-7446
E-mail: tybig*hiroshima-u.ac.jp (*を半角@に変換してください)

講師 佐久間 哲史
TEL: 082-424-6292
E-mail: tetsushi-sakuma*hiroshima-u.ac.jp (*を半角@に変換してください)


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