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本研究成果のポイント
- 肥満や過栄養の状態では、脂肪細胞からの熱産生が低下し、基礎代謝が下がることで、一層、肥満が助長されるという悪循環が生じることが知られていますが、そのメカニズムは解明されていませんでした。
- 過栄養状態では、脂肪細胞内のPin1と名づけられているプロリン異性化酵素が増加し、熱産生に関わるUCP-1の発現が減少することで基礎代謝量を低下することを発見しました。
- Pin1を抑制することで、基礎代謝を上昇させ、肥満を中心としたメタボリックシンドローム改善に繋がる新しい治療方法の確立が期待されます。
概要
広島大学大学院医歯薬保健学研究科の中津祐介講師、浅野知一郎教授らの研究グループは、肥満や脂肪肝の発症には、Pin1と名づけられているプロリン異性化酵素の増加が不可欠な役割を果たすことを明らかにしました。
肥満や過栄養の状態では、脂肪細胞内でPin1が増加し、細胞内の転写共役因子PRDM16に結合して分解を誘導することで、熱産生に関与するUCP-1の発現が抑えられることを示しました。これによって、基礎代謝低下により、肥満や脂肪肝の憎悪が助長されることがわかります。さらに、Pin1遺伝子を欠損するマウスでは、脂肪細胞からの発熱量が高く、高脂肪食を与えても肥満や脂肪肝を発症しないことを示しました 。
本研究の結果から、過剰になっているPin1の機能を抑制することで、肥満や脂肪肝の治療方法に繋げられる可能性が示唆されました。
本研究結果は、2米国学術誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。
論文情報
- 掲載雑誌: Cell Reports
- 論文題目: Prolyl isomerase Pin1 suppresses thermogenic programs in adipocytes by promoting degradation of transcriptional co-activator PRDM16
- 著者: 中津 祐介1、松永 泰花1、山本屋 武1、上田 晃嗣1、井上 賢紀1、水野 優1、中西 魅加子1、佐野 朋美2、山脇 洋輔3、櫛山 暁史4、迫田 秀之5、藤城 緑6、梁 明秀7、小野 啓8、南野 徹9、高橋 伸一郎10、大野 晴也11、米田 真康11、高橋 圭12、石原 寿光6、片桐 秀樹12、西村 英紀2、兼松 隆3、山田 哲也12,13、浅野 知一郎1
1. Department of Medical Science, Graduate School of Medicine, Hiroshima University
2. Department of Periodontology, Division of Oral Rehabilitation, Faculty of Dental Science, Kyushu University
3. Department of Cellular and Molecular Pharmacology, Division of Basic Life Sciences, Institute of Biomedical and Health Sciences, Hiroshima University
4. Division of Diabetes and Metabolism, Institute for Adult Diseases, Asahi Life Foundation
5. Division of Neurology, Respirology, Endocrinology, and Metabolism, Department of Internal Medicine, Faculty of Medicine, University of Miyazaki
6. Division of Diabetes and Metabolic Diseases, Nihon University School of Medicine
7. Department of Microbiology. Yokohama City University of Medicine
8. Department of Clinical Cell Biology, Chiba University Graduate School of Medicine
9. Department of Cardiovascular Biology and Medicine, Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences
10. Departments of Animal Sciences and Applied Biological Chemistry, Graduate School of Agriculture and Life Sciences, The University of Tokyo
11. Department of Molecular and Internal Medicine, Institute of Biomedical & Health Sciences, Hiroshima University
12. Division of Molecular Metabolism and Diabetes, Tohoku University Graduate School of Medicine
13. Department of Molecular Endocrinology and Metabolism, Tokyo Medical and Dental University - DOI: 10.1016/j.celrep.2019.02.066
【お問い合わせ先】
広島大学大学院医歯薬保健学研究科医化学
教授 浅野 知一郎