TEL: 082-424-7462
E-mail: hayasaka*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
本研究成果のポイント
- 島根県津和野町から、日本最古のおよそ25億年前に貫入・固結※1し、18.3億年前に変成作用を受けた花崗片麻岩(正片麻岩)※2の岩体が発見されました。
- この花崗片麻岩は,ペルム紀※3の地層中に挟み込まれた二つのレンズ状岩体(長さ2km、最大幅600mと長さ1.5km、最大幅300m)の双方に含まれ、他に18.5億年前に貫入・固結した花崗岩類や4.2億年前に貫入・固結した花崗岩類と斑れい岩、24.8億年前より古いジルコンだけを含む石英砂岩の変成岩(メタコーツァイト)※4などを伴っています。
- これらの岩体の少なくとも一部は「北中国地塊」と呼ばれる古い大陸地殻からなる安定陸塊(クラトン)を構成していたと考えられるため、本発見は原日本列島の形成史をひもとく上で大変重要なものとなります。
- 本発見は、偶然なされたものではなく、舞鶴帯形成のテクトニックモデルに基づき、舞鶴地域の西方を追跡調査した結果であり、仮説の妥当性を示すものです。
用語説明
※1. 貫入・固結:「貫入」とは、マグマが周囲の岩石を押しのけて地殻中に入り込むことで、貫入して冷えるとマグマは固結して花崗岩などの深成岩となる。
※2. 花崗片麻岩(正片麻岩):一旦冷え固まった花崗岩が何らかの原因で再加熱され、変形されたりして変成作用を受けたものを花崗片麻岩、または正片麻岩と称する。
※3. ペルム紀:およそ3〜2.5億年前の古生代最後の地質時代。二畳紀とも。
※4. 石英砂岩の変成岩(メタコーツァイト):陸上の岩石が削剥されてできた砂粒は、川を流れ下る間に、風化・変質しにくい石英分が次第に増える。大陸を流れる長大な大河の河口付近では石英分が90%以上となり、これが堆積して石英砂岩(コーツァイト)となる。石英砂岩が変成作用を受けたものをメタコーツァイトと称し、風化・変質しにくいジルコンを比較的多く含んでいる。コーツァイトの岩体はこれまで日本国内では知られていなかった。
概要
広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻の早坂康隆准教授と木村光佑研究員(博士)らの研究グループは、島根県津和野町地域に分布する舞鶴帯北縁部のペルム紀の地層中に挟み込まれた花崗岩複合岩体から、日本最古のおよそ25億年前に貫入・固結し、18.3億年前に変成作用を受けた花崗片麻岩(正片麻岩)を発見しました。
これまでは、岐阜県七宗町(ひちそうちょう)にある「日本最古の石博物館」に展示されている20.5億年前に貫入・固結して17.5億年前に変成作用を受けた花崗片麻岩が日本最古の石として知られていました。しかしこの石は、ジュラ紀(およそ2億年前から1.5億年前の地質時代)に堆積した上麻生礫岩(かみあそうれきがん)の礫(石ころ)の一つであり、花崗片麻岩の岩体がある訳ではありません。
一方、島根県隠岐の島町に露出する隠岐変成岩の一部に18.5億年前の花崗片麻岩が存在することが知られており、岩体としてはこれが日本最古のものでした。隠岐変成岩の地質学的位置づけとしては、2000〜1500万年前頃日本海が開いて原日本列島がアジア大陸から引き離されて日本列島が形成された際に、大陸クラトンの一部が隠岐諸島付近にくっついてきたものと考えられてきました。ところが、今回発見された岩体はこれとは異なり、本州の地殻の骨格をなす古生代後期以降(3億年以降)の付加体中に発達する断層帯に挟み込まれた特異な産状を示しており、原日本列島の形成史をひもとく上で大変重要なものです。
本研究は、2013〜2015年度科学研究費助成金、基盤研究(C)「砕屑性ジルコン・モナザイトのU-Pb年代に基づく日本列島の地質構造発達史」(課題番号:25400486)の一環として行われたものです。
本研究成果は、2019年2月15日に発行された地質学雑誌に掲載されました。
本件につきまして、3月25日、霞キャンパスにおいて記者説明会を開催しました。
日本最古の岩石(花崗片麻岩)
25億年前に貫入・固結した花崗岩が18.3億年前に変成作用を受け、縞状の構造を示す花崗片麻岩となった。
論文情報
- 掲載雑誌: 地質学雑誌
- 論文題目: 島根県津和野地域の舞鶴帯から古原生代18.5億年花崗岩質岩体の発見とその意義 (Discovery of Paleoproterozoic 1.85 Ga granitoid bodies from the Maizuru Terrane in the Tsuwano area, Shimane Prefecture, Southwest Japan and its geologic implications)
- 著者: 木村光佑1、早坂康隆1、柴田知之1、川口健太1、藤原弘士1
1. 広島大学大学院理学研究科 - DOI: 10.5575/geosoc.2018.0050
- 報道発表資料(808.69 KB)
- 地質学雑誌 第125巻 第2号 (通巻1481号) 2019年2月の目次はこちら
- 広島大学研究者総覧 (早坂 康隆 准教授)
- 大学院理学研究科地球惑星システム学専攻ホームページ
広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻
准教授 早坂 康隆