岐阜大学研究推進・社会連携機構 生命の鎖統合研究センター
准教授 木塚 康彦
TEL:058-293-3356
E-mail:kizuka*gifu-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)
広島大学大学院統合生命科学研究科生物工学プログラム
准教授 中ノ 三弥子
TEL:082-424-4539
E-mail:minakano*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)
岐阜大学研究推進・社会連携機構 生命の鎖統合研究センター(G-CHAIN)の木塚康彦准教授のグループは、広島大学大学院統合生命科学研究科の中ノ三弥子准教授らとの共同研究で、細胞内で複雑な形を持つ糖鎖が作られる仕組みの一端を明らかにしました。
本研究成果は、米国の国際誌Molecular and Cellular Proteomics誌のオンライン版で発表されました。
糖鎖1)とは、ブドウ糖などの糖(動物では約10種類の糖が存在)が鎖状につながったもので、タンパク質や脂質などに結合して存在しています。動物では、半数以上のタンパク質に糖鎖が付いています。タンパク質に付いた糖鎖の形は複雑で、タンパク質ごとに糖鎖の形が異なることが知られています。さらに、同じタンパク質でも細胞の種類や疾患などに応じて糖鎖の形が変化することから、がんなどの疾患のバイオマーカー2)として糖鎖が臨床で用いられています。
糖鎖は、糖鎖を作る酵素(糖転移酵素3))の働きによって細胞の中で作られます。糖転移酵素は約180種類が知られていますが、細胞の中でこれらの酵素の働きがどのように調節されて、複雑な糖鎖がどのように作られるのかはあまりよくわかっていません。今回、タンパク質に付いた糖鎖がいったんバイセクト型4)という特定の形になると、それ以降の糖鎖の伸長や修飾があまり起きなくなることがわかりました。バイセクト型の糖鎖を欠損したマウスでは、通常のマウスよりも複雑な形やよく伸びた形の糖鎖が増えていたことから、バイセクト糖鎖は、糖鎖全体の生合成を抑える作用があることが明らかになりました。バイセクト糖鎖はアルツハイマー病やがんの進展と深い関係があることから、今回の発見はこれらの疾患の発症機構を知る上でも重要な知見になると考えられます。
1) 糖鎖:グルコース(ブドウ糖)などの糖が鎖状につながった物質。遊離の状態で存在するものもあれば、タンパク質や脂質に結合した状態のものもある。デンプン、グリコーゲンなどの多糖は数多くの糖がつながり、糖鎖だけで遊離の状態で存在する。一方タンパク質に結合したものは、数個から20個程度の糖がつながったものが多い。
2) バイオマーカー:体液中などにおける存在量が疾患の有無や進行度の指標となるような生体物質。糖鎖も、がんなどのバイオマーカーとして用いられる。
3) 糖転移酵素:糖鎖を合成する酵素のことで、ヒトでは180種類程度存在することが知られている。主に、細胞の中のゴルジ体と呼ばれる小器官に存在している。
4) バイセクト(型)糖鎖:枝分かれした糖鎖の形の一つ。中央部のマンノース(緑丸)にN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)(青四角)の枝分かれがある形のこと。GnT-IIIの働きによって作られる。
岐阜大学研究推進・社会連携機構 生命の鎖統合研究センター
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掲載日 : 2019年08月05日
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