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【研究成果】宇宙最盛期を支える銀河の原材料~約100億年前の銀河たちがもつ分子ガス~

本研究成果のポイント

  • 空間と時間の3次元でかつてない大規模な深宇宙探査をアルマ望遠鏡で行い、宇宙の歴史の中でもっとも活発に星が作られていた約100億年前の時代で、星の原材料となる分子ガスと塵(ちり)を多数の銀河で特定しました。
  • この観測により、宇宙が誕生して20億年経った頃から現在までの銀河で、星の原材料である分子ガスの進化をより良い精度で明らかにすることができました。
  • 更に、銀河の3次元地図をもとにアルマ望遠鏡のデータを足し合わせた結果、今まで観測されなかった微弱な分子ガスを検出することに成功しました(図1)。

※ アルマ望遠鏡: 南米チリの標高5,000mの高地に建設され、2011年に科学観測を開始した巨大望遠鏡。日本を含む22の国と地域が協力して運用しています。

概要

本学宇宙科学センター助教・稲見華恵を含む国際研究チームは、アルマ望遠鏡を使い、空間と時間方向を含む3次元によるかつてない大規模な深宇宙探査を行うことで、約100億年前の銀河で星の原材料となる一酸化炭素分子と宇宙塵(うちゅうじん)をもつ銀河を特定しました。本研究では、ハッブル宇宙望遠鏡の重点観測領域であるハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールドと呼ばれる空の領域をくまなく観測することで、今まで大量の分子ガスや塵(ちり)を持つとは予想されていなかった銀河でも、ガスと塵が発見されました。星が最もたくさん生まれていた宇宙最盛期とも言える、宇宙誕生から約40億年たった頃に星を作っていた銀河は、平均して星よりも多くの分子ガスで構成されていたことが分かりました。

本学の稲見助教は、星が少なく星形成も穏やかな銀河の分子ガスも調べるため、銀河の3次元地図をもとにしてアルマ望遠鏡のデータを重ね合わせることで、小さな銀河においてもガスの検出に成功しました(図1)。これにより、天の川銀河の1/10程度の小さいな銀河では、星が多くなってもガスはそれほど減らないことが分かりました。星質量が大きくなればなるほどガス質量が急激に小さくなる大質量銀河とは異なる傾向をもっていたのです。この傾向が遠方銀河で確認されるのは初めてで、宇宙にありふれた小さな銀河は大質量銀河とは異なる生成過程をもつ可能性を示唆します。

本研究では国際チームにより20本の査読論文が出版されています。最新の結果は米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」にて既に査読され受理されており、プレプリント・サイト arXiv.org に投稿されています。また、論文一覧はプロジェクトチームのウェブサイト aspecs.infoを御覧ください。

図1. 銀河が存在すると分かっている場所でありながらも分子ガスが直接検出されていないアルマ望遠鏡の

    データを重ね合わせることで、今まで見つからなかった微弱な分子ガスを検出することに成功しました。

論文情報

  • 掲載誌: The Astrophysical Journal
  • 論文タイトル: The ALMA Spectroscopic Survey in the HUDF: Constraining the Molecular Content
            at log(M∗/M⊙)∼9.5 with CO stacking of MUSE detected z∼1.5 Galaxies
  • 著者名:Hanae Inami, Roberto Decarli, Fabian Walter, Axel Weiss, Chris Carilli, Manuel Aravena, Leindert Boogaard, Jorge González-López, Gergö Popping, Elisabete da Cunha, Roland Bacon, Franz Bauer, Thierry Contini, Paulo C. Cortes, Pierre Cox,  Emanuele Daddi, Tanio Díaz-Santos, Melanie Kaasinen, Dominik A. Riechers, Jeff Wagg, Paul van der Werf, Lutz Wisotzki

その他

この研究は、日本学術振興会科学研究費補助金(No. JP19K23462)、CONICYT + PCI + IN-STITUTO MAX PLANCK DE ASTRONOMIA MPG190030、ERC Advanced Grant 740246 (Cosmic Gas)、CAS-CONICYT Call 2018、NSF (grant numbers AST-1614213 and AST-1910107)、Alexander von Humboldt Foundation、International Max Planck Research School for Astronomy and Cosmic Physics at Heidelberg University (IMPRS-HD)の支援を受けて行われました。アルマ望遠鏡は、欧州南天天文台、米国国立科学財団、自然科学研究機構がカナダ国家研究会議、台湾行政院科技部、中央研究院天文及天文物理研究所、韓国天文宇宙科学研究院とともにチリ共和国と協力して推進しています。合同アルマ観測所は、欧州南天天文台、米国北東部大学連合/米国国立電波天文台、国立天文台が運用しています。

【お問い合わせ先】

<研究に関すること>

広島大学 宇宙科学センター

助教 稲見 華恵

Tel: 082-424-3468

E-mail: hanae*hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

<アルマ望遠鏡に関すること>

国立天文台アルマプロジェクト

教育広報主任 平松正顕

TEL: 0422-34-3630

E-mail: hiramatsu.masaaki*nao.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)

<報道に関すること>

広島大学 財務・総務室 広報部広報グループ

TEL: 082-424-3701

E-mail: koho*office.hiroshima-u.ac.jp (注:*は半角@に置き換えてください)


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