<研究内容について>
広島大学 大学院医系科学研究科 未病・予防医学共同研究講座
教授 杉山 政則
TEL: 082-257-5280
E-mail: sugi*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
本研究成果のポイント
- 常的に身体的疲労感を持つ人々に5-アミノレブリン酸リン酸塩(5-ALAP)※1を8週間連続して経口摂取してもらうことで、疲労が低減化するか否かを二重盲検法※2による臨床試験で実施しました。
- 本研究では、5-アミノレブリン酸(5-ALA)※3の錠剤の摂取による身体的疲労と精神的気分に対する影響を検証するために、VAS (Visual Analogue Scale)※4とPOMS2 (Profile of Mood Status 2nd Edition)※5という手法を用いて身体的疲労感と気分を数値化し、摂取群とプラセボ群※6の間で比較解析しました。
- VAS手法によると、5-ALAPを8週間摂取することにより、「全体的な疲労感」と「仕事による疲労感」等のスコアがプラセボ群に比べて有意に低下しました。
また、POMS2手法によると、「疲労-無気力」、「抑うつ-落込み」、「総合的気分状態」について、5-ALAP摂取群においてのみ、摂取前後で有意な低下が認められました。
概要
具体的には、当研究室に登録されている被験者ボランティア(登録数約5,200人)から参加を募り、日常的に身体的疲労を感じている男女70人(20~64歳)を2群に分けて、35人については一日当たり5-ALAP 30mgを含む錠剤を、残りの35人はこの物質を含まない錠剤(プラセボ群として)を8週間、毎日、経口摂取してもらいました。そして、4週ごとに、「全体的な疲労感」、「仕事による疲労感」、「仕事の捗り具合」及び「朝起きた時の疲労感」の4項目について、及び、その時の気分をスコア化しました。
その結果、プラセボ群と比較すると、5-ALAP摂取群では、「全体的な疲労感」、「仕事による疲労感」及び「怒り-敵意」の項目で、有意減化が認められました。すなわち、5-ALAPの経口摂取は日常的に感ずる身体の疲労感とネガティブな気分の両者を改善することが判明しました。
この研究成果は、Nature Publishing Groupの「Scientific Reports」電子版に掲載されました (Impact Factor = 4.12)。
用語解説
(※1) 5-アミノレブリン酸リン酸塩(5-ALAP)
5-アミノレブリン酸のリン酸塩
(※2) 二重盲検法
評価者と被験者の両方が、試験食あるいはプラセボのどちらを摂取しているか分からないようにして実施する方法
(※3) 5-アミノレブリン酸(5-ALA)
天然アミノ酸であり、生体内において重要な役割を持つヘムタンパク質を構成するヘムの前駆体。人を始めとして、動植物に広く分布する。
(※4) VAS (Visual Analogue Scale)
痛みの強度を評価する手法の1つ。100mmの直線を引き、最も左を疲労感ゼロ、最も右を最大の疲労感とした場合に、疲労感がどの程度であるか、被験者が直線上に印(マーク)を入れることで客観的に評価できる。
(※5) POMS2 (Profile of Mood Status 2nd Edition)
世界的に用いられている心理検査であり、65項目の質問を投げかけて被験者の気分を評価する方法
(※6) プラセボ群
5-アミノレブリン酸リン酸塩を含まない錠剤を経口摂取するグループ
論文情報
- 掲載誌: Scientific Reports
- 論文タイトル: Reduction of fatigue and anger-hostility by the oral administration of 5-aminolevulinic acid phosphate: a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel study
- 著者名: Fumiko Higashikawa1, Keishi Kanno2, Akiko Ogata3, and Masanori Sugiyama1
1Department of Probiotic Science for Preventive Medicine, Graduate School of Biomedical and
Health Sciences, Hiroshima University
2Department of General Internal Medicine, Hiroshima University Hospital
3Department of Psychology, Graduate School of Education, Hiroshima University - DOI: 10.1038/s41598-020-72763-4