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【研究成果】単分子でメモリ効果を示す!「籠型分子を用いた超高密度不揮発性メモリおよび超低消費電力AIチップの開発」が、JSTの大学発新産業創出プログラム(START)に採択されました

国立研究開発法人科学技術振興機構(以下「JST」という。)が公募した「研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START)」において、国立大学法人広島大学大学院先進理工系科学研究科・教授 西原禎文および事業プロモーターであるユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社が提案した「籠型分子を用いた超高密度不揮発性メモリおよび超低消費電力AIチップの開発」が採択されました。

プロジェクト概要

1nm(ナノメートル)サイズの一つの分子に情報を記録できる籠型分子を用いて、高速・高密度・低消費電力の不揮発性メモリを開発し、AI・ビッグデータ時代を支える革新的コンピュータの実現に貢献するベンチャー設立を目指します。

核となる研究シーズの内容

籠型形状を有するプレイスラー型ポリオキソメタレートが単一分子で強誘電体に特徴的な分極ヒステリシスや自発分極を示す「単分子誘電体」となることを発見しました(※1)

この籠型分子は、分子内部に中心からずれた2箇所のイオン安定サイトを有しており、ここに1つの金属イオン(Mn+)が包接されています【図1(a)】。従って、Mn+イオンがどちらかの安定サイトに停止すると、分子分極が生じ【図1(b)】、また、電場によってイオンの位置を選択できることから、籠型分子は一分子で強誘電体の性質である分極ヒステリシス(メモリ効果)【図1(c)】や自発分極【図1(d)】を示す「単分子誘電体」となります。上記の性質により、籠型分子は包接イオンの位置によって0または1の情報を表現できます。つまり室温において1nmサイズの分子に1ビットの情報を格納し、安定に読み書きが可能であり、超高密度不揮発性メモリとしての活用が期待できます(※2),(※3)

籠型分子は1nmサイズの単一分子で情報を保持できるため、理論的には従来の記録密度限界値よりも更に100から1,000倍(1P(ペタ)bit/in2)の高密度化が可能です【図2】。

STARTについて

大学発新産業創出プログラム(START)では、事業化ノウハウを持った人材(「事業プロモーター」)ユニットを活用し、大学等発ベンチャーの起業前段階から、研究開発・事業育成のための公的資金と民間の事業化ノウハウ等を組み合わせることにより、ポテンシャルの高い技術シーズに関して、事業戦略・知財戦略を構築しつつ、市場や出口を見据えて事業化を目指すプログラム(※4)です。

参考資料

図1

(a)分子内部に2箇所のイオン安定サイトを有する籠型分子(単分子誘電体)。
(b)籠型分子の分極エネルギー構造。イオン(Mn+)の位置によって、1と0の情報を表現する仕組み。
(c)強誘電秩序を示さないにも関わらず室温で分極ヒステリシスや、
(d)自発分極を示す様子。(挿図)籠型分子を実装したメモリデバイスプロトタイプ。

図2 
籠型分子と従来のメモリ素子のサイズと記録密度の比較

【単位】
1nm = 10億分の1メートル
1Pbit(ペタビット)/in2 = 1,000Tbit(テラビット)/in2 =  1,000兆ビット毎平方インチ

参考文献

(※1) C. Kato, S. Nishihara, et al., Angew. Chem. Int. Ed., 57(41), 13429 (2018).
(※2) A. M. Reed, et al. Nature Nanotech., in press.
      https://doi.org/10.1038/s41565-020-00780-5 (2020).
(※3) S. Nishihara, Nature Nanotech., in press
        https://www.nature.com/articles/s41565-020-00780-5 (2020).
(※4) START事業概要 https://www.jst.go.jp/start/jigyo/index.html

【お問い合わせ先】

大学院先進理工系科学研究科 
教授 西原 禎文
TEL: 082-424-7418 
E-mail:snishi*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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