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国際宇宙ステーションを利用したタンパク質(BAT)の結晶化とその立体構造解析に成功



医歯薬学総合研究科杉山政則教授らが、地上と国際宇宙ステーション(ISS)を利用して行った研究成果が、米国生化学・分子生物学会の学術誌 Journal of Biological Chemistry(JBC) の本年1月8日号に掲載(昨年11月電子版で発表)されました。



杉山教授は1994年、抗がん剤ブレオマイシン(Bm)を不活性(アセチル化)にする酵素(ブレオマイシン N-アセチルトランスフェラーゼ:BAT)を発見しています。



Bmは、がん細胞の中で鉄と結びついて酸素を活性化させ、それによってDNA鎖を切断し、がん細胞の増殖を抑制します。抑制効果は高いのですが、間質性肺炎や肺線維症を引き起こしやすいのが欠点とされています。

BATは、Bmをアセチル化して無毒にする酵素なので、DNA切断機能を失わせる、つまり抗がん剤としての効果をなくす作用を持っています。

杉山教授のグループは、BATの立体(三次元)構造を知り、Bmの働きをコントロールできれば、Bmの切れ味を残したまま副作用をなくせるかも知れないと考え、長年、BATのX線結晶構造解析に取り組んできました。



しかし、立体構造解析に必要なBATの良質な結晶化は地上では難しく、行き詰まっていたところ、JAXA(宇宙航空研究開発機構)がISSでの実験プロジェクトを公募していることを知り、応募しました。

ロシアの宇宙船ソユーズでISSまで運ばれたBATタンパク質溶液から、微少重力場で3~4か月かけ、結晶化に成功しました。その結晶を地上に回収し、大型放射光施設SPring-8(兵庫県佐用町)において、X線回折像を収集。みごとに、BATの立体構造を決定することができました。



地上実験でも、結合していない状態のBAT、BATにCoA(BATの基質)が結合した状態の結晶、Bm・CoA・BATの三者からなる複合体の結晶を作 り、それぞれX線結晶構造解析法を用いて、立体構造(三次元構造)を決定することに成功しました。



タンパク質の立体構造情報は、タンパク質の機能と構造との相関性理解を進め、ドラッグデザインや新規タンパク質の創生に役立つと期待されます。

【この記事に関するお問い合わせ先】 

広島大学広報グループ

TEL:082-424-6131


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