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【研究成果】細胞核の空間的配置を決定するメカニズムを発見

本研究成果のポイント

  • 細胞核(※1)はそれぞれの細胞で決まった空間的配置を占め、それが遺伝情報(染色体・DNA)の伝達に重要です。しかし、その位置がなぜ・どのように決定されているかというメカニズムは分かっていません。
  • 分裂期進行に異常を示す分裂酵母(※2)変異体において、本来、細胞中央に位置する細胞核が赤道面から大きく移動するという現象を発見しました。
  • このような細胞核の移動は、細胞質分裂に必須な収縮環(※3)の形成に依存して起こることを明らかにしました。
  • 細胞核が細胞赤道面から大きく移動した細胞は、細胞質分裂による細胞核の物理的破断を免れ、ゲノム情報が倍化した細胞として生存できることが分かりました。

概要

広島大学 大学院統合生命科学研究科・広島大学健康長寿研究拠点の登田 隆 特任教授、湯川 格史 助教のグループは、遺伝情報(染色体・DNA)が収納されている細胞核の細胞内配置決定に関わる新たな経路を発見しました。

これまで分裂期に異常をもつ分裂酵母変異体では、未分裂の細胞核が細胞赤道面に配置したまま細胞質分裂を引き起こすために細胞核が破断され、細胞は生存できないと考えられていました。しかし、実際には細胞核を細胞赤道面から一方向に大きく移動させることにより、二倍体として生き残ることを発見しました(図)。

登田教授らは、さらに細胞核の移動が細胞質分裂の際に細胞赤道面に形成される収縮環に依存しており、収縮環形成に働くアクチン繊維(※4)やミオシンモーター(※5)が細胞核の移動に必要であることを明らかにしました。

本研究成果は、「iScience」オンライン版に掲載されました。

用語解説

(※1) 細胞核
真核生物の細胞を構成する細胞小器官のひとつ。細胞の遺伝情報(染色体・DNA)の保存と伝達を行い、ほぼ全ての細胞に存在する。

(※2) 分裂酵母
細胞中央(赤道面)で分裂して増殖する酵母で、直径3〜4 μm、長さ7〜15 μmの円筒形をした細胞。細胞分裂研究のモデル系として、広く用いられている。

(※3) 収縮環
動物細胞や酵母が細胞質分裂する際には、細胞赤道面の表層がくびれて分裂するが、このくびれ部分(分裂溝)に一過的に形成されるアクチン繊維を主成分とした構造。収縮環がアクチンとミオシンの相互作用によって収縮することにより、細胞を二分する。

(※4) アクチン繊維
細胞内部で骨組みとして働くタンパク質で、球形の単量体が数珠のようにつながって重合し、さらにらせん状に絡まってできた直径 5〜9 nmの繊維構造。細胞の形態変化や運動に深く関わっている。

(※5) ミオシンモーター
ATPの加水分解によって得られたエネルギーを利用して、アクチン繊維上を移動するモータータンパク質。

論文情報

  • 掲載誌: iScience
  • 論文タイトル: Escape from mitotic catastrophe by actin-dependent nuclear displacement in fission yeast
  • 著者名: Masashi Yukawa*, Yasuhiro Teratani and Takashi Toda* (*共同責任著者)
  • DOI: 10.1016/j.isci.2020.102031
【お問い合わせ先】

広島大学 大学院 統合生命科学研究科・健康長寿研究拠点

特任教授 登田 隆

TEL: 082-424-7868

E-mail: takashi-toda*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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