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【研究成果】一般消費者は企業選択をする際に、企業のSDGsの取り組みを評価するか

本研究成果のポイント

  • 一般消費者は、商品購入、投資、転職・就職する際に、SDGsに積極的に取り組む企業を選択する。
  • SDGsに関する意識向上を促すことで、SDGsに取り組む企業への選好が上がる。
  • 意識向上の効果は、個人属性、性格、サスティナビリティに配慮した行動に異質性がある。

概要

広島大学FE・SDGsネットワーク拠点 山根友美研究員、金子慎治拠点長・大学院人間社会科学研究科教授・副学長(グローバル化推進担当)は、民間セクターがSDGs達成に向けた取り組みをすることが有益かどうかを分析することを目的として、2019年3月に日本人約6000人を対象としてオンライン調査を実施しました。

一般消費者が商品購入、投資、転職・就職する際に仮想的な状況で、SDGsへの取り組みを支援する企業を選択するかを検証しました。また、被験者をSDGsの本質に関する情報を与えるグループと与えないグループにランダムに割り当て、情報を与えることで、選好が変わるかを確認しました。SDGsに関する意識向上を促すことで、SDGsに取り組む企業への選好が上がることが確認されました。一方で、意識向上の効果は、個人属性、性格特性、サスティナビリティに配慮した行動について異質性があることがわかりました。

本研究成果は、Journal of Cleaner Productionに掲載されました。

背景

持続可能な開発目標(SDGs、エス・ディ・ジィーズ)は、2015年に国連で採択された国際目標です。環境・社会・経済の諸問題を包括的に扱った17個の目標から構成され、2030年までに、先進国も途上国も、国も企業も個人も、みんなが協力し、誰一人として取り残さない持続可能な世界を実現することを目指しています。SDGsを達成するためには、民間セクターの積極的な取り組みが欠かせません。SDGsは、企業の慈善事業や寄付などの社会貢献活動を超えて、持続可能性を事業の中心に捉えることを求めています。多くの企業がSDGsへの取り組みを始めていますが、SDGsに積極的に取り組むことで一般消費者からの支持を得ることが出来るのかは明らかになっていません。一般消費者がSDGsに積極的に取り組む企業を選択することが分かれば、企業はさらにSDGsへの取り組みを加速することが考えられます。

研究成果の内容

本研究では、一般消費者はSDGsに取り組む企業を支持するかを測るために、コンジョイントサーベーとランダム化比較試験(RCT)を組み合わせたオンライン調査を、実施しました。対象者は18-74歳の日本人で、地域、性別、年齢の人口構成比で割付し、約6,000人(平均年齢47歳:男性(49.93%)、女性(50.07%))から回答を得ました。被験者をSDGsの本質に関する情報を与えるグループ(トリートメント群)と与えないグループ(コントロール群)にランダムに割り当て、情報を与えることで、選好が変わるかを確認しました。特に、SDGsに関する情報を使って意識向上を促すことで、企業への支持が上昇するか、それらの効果に異質性があるかに着目しました。

SDGsに積極的に取り組みを行う企業(各SDGsゴールに貢献し、その取り組みから収益を得ている)への支持率は65.2%で、SDGsに関する意識向上を促進することで、68-69.9%に上昇することが確認されました。

個人属性(性別・学歴・収入・世代)、Big five性格特性 (外向性、協調性、勤勉性、情緒不安定性、開放性)、サスティナビリティに配慮した行動(環境、グローバリゼーション)が情報への効果に影響があるか検証しました。

性別における異質性では、女性が情報への効果が高いことが分かりました。コントロール群では、SDGsに積極的に取り組みを行う企業への支持率が、男女ともに約65%であるのに対して、トリートメント群では女性は最大72.4%まで上昇しますが、男性は67.5%に留まります。学歴においては、高卒までの学歴の被験者への情報の効果が高いことが確認されました。協調性の高い被験者は、コントロール群及びトリートメント群の両方で協調性の低い人よりも支持率が高いことが確認されました。また、勤勉性の高い(まじめ)または開放性が高い(好奇心が強い)被験者への情報の効果が高いことが確認されました。サスティナビリティに配慮した行動では、日常的に環境やグローバリゼーションに配慮した行動を行う被験者の企業への支持率が高いことが分かりました。

本研究では、一般消費者が企業選択の際に、SDGsに積極的に取り組む企業を選好することが明らかになりました。また、SDGsに関する意識向上を図ることで、SDGsに積極的に取り組む企業への支持率が上がることが分かりました。一方で、意識向上効果は異質性があることが確認されました。

今後の展開

本研究では、商品購入、投資、転職・就職などの場面の違いにおける企業への支持については検証することが出来なかったため、今後さらに分析を進めていく予定です。
また、若者世代(ミレニアル、Z世代)がSDGs達成に向けた担い手になるかを検証した研究を行っています。

論文情報

  • 掲載誌: Journal of Cleaner Production
  • 論文タイトル: Impact of raising awareness of Sustainable Development Goals: A survey experiment eliciting stakeholder preferences for corporate behavior
  • 著者名: 山根友美, 金子慎治
  • DOI: 10.1016/j.jclepro.2020.125291
【お問い合わせ先】

広島大学 FE・SDGsネットワーク拠点(NERPS、ナープス) 
研究員 山根 友美
TEL: 082-424-7640
E-mail: tomomi*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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