大学院医系科学研究科
未病・予防医学共同研究講座
教授 杉山 政則
Tel:082-257-5280
Fax:082-257-5284
E-mail:sugi*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)
本研究成果のポイント
齲蝕(虫歯)の起因菌Streptococcus(S.)mutansによる粘着性グルカン(バイオフィルムの素材となる化合物)の形成を阻害する物質(GlucanInhibitor:GI)を、マタタビの花から取得した植物由来乳酸菌(植物乳酸菌)の一種「LactobacillusreuteriBM53-1」がつくることを発見しました。
グルカン形成阻害物質(GI)は熱耐性を示すので、熱処理により機能性は失われません。また、GIは抗生物質のような抗菌活性を有しないことから、口腔内フローラを破綻させず、かつ、薬剤耐性菌も誘発させません。したがって、GIはヘルスケア機能素材として有用なことから、本学大学院医系科学研究科未病・予防医学共同研究講座と連携する企業とで実用化を図ろうとしています。
概要
口腔細菌の一種S.mutansが歯表面につくる「粘着性グルカン」に口腔内細菌が付着することにより、バイオフィルムが形成されます。バイオフィルムに付着した細菌が産生する酸で局所的にpHが低下して齲蝕(虫歯)となります。本研究成果として、粘着性グルカンの形成を阻害する物質(GI)をつくる植物由来乳酸菌BM53-1株を見出し、GIの作用機序メカニズムを解明しました。
本研究成果は6月27日にオンラインジャーナル「Microorganisms:Impactfactor=4.15」に掲載されました。

図1 スクロース存在下でS.mutansを培養したときの走査型電子顕微鏡(SEM)写真
(A):GIを含むBM53-1醗酵液を添加して培養した場合、(B):未発酵液を添加した場合。
(A)のSEM写真からわかるように、ミュータンス菌細胞の周囲に粘着性グルカンが観察されない。
論文情報
- 掲載誌: Microorganisms. 2021、9(7)、1390.
- 論文タイトル: Lactobacillus plantarum BM53-1 produces a compound that inhibits sticky glucan synthesis by Streptococcus mutans
- 著者名: Masafumi Noda1、 Naho Sugihar1、 Yoshimi Sugimoto1、 Ikue Hayashi2、 Sachiko Sugimoto3、 Narandalai Danshiitsoodol1、 and Masanori Sugiyama1*
1 Department of Probiotic Science for Preventive Medicine、 Graduate School of Biomedical and Health Sciences、 Hiroshima University
2 Central Research Laboratory、 Graduate School of Biomedical and Health Sciences、 Hiroshima University
3 Departments of Pharmacognosy、 Graduate School of Biomedical and Health Sciences、 Hiroshima University - DOI: https://doi.org/10.3390/microorganisms9071390