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【研究成果】芍薬抽出液を植物由来乳酸菌Lactobacillus brevis 174Aで発酵すると酸化および炎症を抑える物質が新生することを発見

本研究成果のポイント

「立てば芍薬、座れば牡丹」のように、美しい花として知られる芍薬(シャクヤク)の根は漢方薬「芍薬甘草湯」として、急激に起こる筋肉の痙攣を伴うこむら返りの治療薬のほか、急性の腰痛・腹痛などに使われています。
伊予柑の果皮から分離された乳酸菌Lactobacillus brevis 174Aで芍薬の抽出液を発酵すると、発酵液中に酸化及び炎症を抑制する化合物が新規に生成することを発見しました。その生物活性物質の構造を解析した結果、ピロガロール(注1)であることが判明しました。具体的には、未発酵の芍薬抽出液の生物活性と比べたところ、強い抗酸化作用が見出されました。さらに、LPS(lipopolysaccharide)刺激でマクロファージ細胞から放出される炎症性サイトカインIL-6(注2)及びTNF-α量は、芍薬発酵液の添加より阻害され、かつ、iNOS(inducible nitric oxide synthase)、IL-6、TNF-α及びIL-1β遺伝子の発現が強く阻害されました。

概要

薬用植物は伝統的に病気の治療に利用され、漢方薬(生薬)の素材として広く使われています。広島大学大学院医系科学研究科 未病・予防医学共同研究講座(杉山 政則教授)では、薬用植物が本来持つ薬効の機能を高めるだけでなく、新しい薬効を新生するための技術開発を推進しています。その一環として、さまざまな薬用植物の抽出液を培地として植物由来の乳酸菌株を培養し、得られた醗酵液の生物活性評価を進めています。
今回の重要な知見として、未発酵の芍薬抽出液にはほとんど見いだされませんが、乳酸菌醗酵液では抗酸化機能が増強されたほか、LPS刺激したRAW264.7マクロファージ細胞の産生する炎症性サイトカインの発現も有意に抑制されました。

図1  Lactobacillus brevis 174A芍薬発酵液のマクロファージ細胞に対する活性機能
(a)未発酵及び発酵エキスの細胞内ROSレベルへの影響、総フェノール含量
  棒グラフ:24時間ごとの細胞内ROS量、 折れ線グラフ:総フェノール含量を示す   
(b)未発酵及び発酵エキスの炎症性サイトカインIL-6に対する阻害率

用語解説

(注1)ピロガロール (pyrogallol) :
ベンゼンの1,2,3位の水素がヒドロキシル基に置換した化合物。本化合物は主要抗酸化物質として高知県の伝統的なお茶である「碁石茶」にも含まれている。
(注2)IL-6:
関節リウマチなどの自己免疫疾患では患者の血中に炎症性サイトカインIL-6の顕著な増加が認められる。そこで、IL-6の過剰発現を抑制する物質はIL-6の異常産生に起因する自己免疫疾患の治療薬として期待できる。

論文情報

  • 掲載誌: Antioxidants 2021、10、1071.Impact factor = 6.312
  • 論文タイトル: Anti-Oxidant and Anti-Inflammatory Substance Generated Newly in Paeoniae Radix Alba Extract Fermented with Plant-Derived Lactobacillus brevis 174A
  • 著者名: Shrijana Shakya1、Narandalai Danshiitsoodol1、Sachiko Sugimoto2、Masafumi Noda1 and Masanori Sugiyama1*
    1 Department of Probiotic Science for Preventive Medicine、Graduate School of Biomedical and Health Sciences、Hiroshima University
    2 Departments of Pharmacognosy、Graduate School of Biomedical and Health Sciences、Hiroshima University
  • DOI: https://doi.org/10.3390/antiox10071071
【お問い合わせ先】

大学院医系科学研究科 
未病・予防医学共同研究講座
教授 杉山 政則
Tel:082-257-5280
Fax:082-257-5284
E-mail:sugi*hiroshima-u.ac.jp (注: *は半角@に置き換えてください)


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