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【研究成果】B型肝炎ウイルスの肝細胞感染に必要なキナーゼKIF4とその阻害剤を同定~治療法の開発に向けてさらに研究が促進される~

本研究成果のポイント

  • B型肝炎ウイルス(HBV)が感染する際に必要なNTCP(ヒトNa+/タウロコール酸共輸送ポリペプチド)を肝細胞表面に発現させるのに必要なキナーゼであるKIF4を発見した。
  • この分子の働きがないとNTCPが細胞表面に移動することができなくなるためウイルスの感染ができなくなる。
  • このキナーゼの働きを阻害する物質として核内受容体レチノイドX受容体アゴニストであるBexaroteneとAlitretinoinを同定した。
  • これらの化合物をさらにB型肝炎ウイルスの治療に最適化することによりB型肝炎ウイルスに対する新たな治療薬の開発が期待される。

概要

 広島大学自然科学研究支援開発センター 柘植雅貴講師、広島大学大学院医系科学研究科 茶山一彰医療イノベーション共同研究講座教授らは、国立感染症研究所などとの共同研究でB型肝炎ウイルス(HBV)に対する新たな治療薬のシーズを発見しました。HBVはDNA型の肝炎ウイルスで、肝細胞の表面に存在するNTCPというポリペプチドをレセプターとして感染します。茶山共同研究講座教授らは様々なキナーゼの働きを抑制するスクリーニングを実施し、KIF4というキナーゼがNTCPを肝細胞の表面に発現させるのに必要であることを同定しました。
さらに、このキナーゼの働きを抑制することができる核内受容体レチノイド X 受容体アゴニストであるBexaroteneとAlitretinoinがウイルスの感染を阻害することを見出しました。これらの薬剤の類似化合物はB型肝炎ウイルスの感染を予防することが明らかになったので、これらの化合物をさらに改良し、新しいB型肝炎ウイルスの治療薬の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、3月21日にウイルス学関連雑誌の最高峰の一つである「PLoS Pathogens」電子版に掲載されました。

KIF4によるNTCPの肝細胞表面への移行とRXR agonistによるその阻害
KIF4はNTCPを微小管フィラメントに沿って細胞表面に誘導する(左)。KIF4が存在しなくなると(右)NTCPは水先案内人を失ったかのように細胞表面に移行できなくなる。RXR agonistであるBexaroteneはFOXM1の働きを抑制することによりKIF4の細胞内での発現を阻害し、このことによりNTCPの細胞表面への移行を阻止する。この状態ではB型肝炎ウイルスはNTCPを介して肝細胞内に取り込まれることができなくなり、感染が成立しなくなる。従ってBexaroteneのような化合物はB型肝炎ウイルスの感染を阻止する新たな治療薬となる可能性がある。

論文情報

  • 掲載誌: PLoS Pathogens
  • 論文タイトル: The kinesin KIF4 mediates HBV/HDV entry through the regulation of surface NTCP localization and can be targeted by RXR agonists in vitro.
  • 著者名:Sameh A Gad, Masaya Sugiyama, Masataka Tsuge, Kosho Wakae, Kento Fukano, Mizuki Oshima, Camille Sureau, Noriyuki Watanabe, Takanobu Kato, Asako Murayama, Yingfang Li, Ikuo Shoji, Kunitada Shimotohno, Kazuaki Chayama, Masamichi Muramatsu, Takaji Wakita, Tomoyoshi Nozaki, Hussein H Aly.
  • DOI: 10.1371/journal.ppat.1009983
【お問い合わせ先】

広島大学大学院医系科学研究科
医療イノベーション共同研究講座
茶山 一彰
Tel:082-257-2022   
E-mail:chayama*hiroshima-u.ac.jp

(注: *は半角@に置き換えてください)


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