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【研究成果】冠水状態で植物の酸素取り込みが減少する「低酸素ストレス応答」のメカニズム解明につながる新たな候補遺伝子を発見

本研究成果のポイント

  • 近年気候変動により大規模洪水が頻発するようになり、長時間冠水状態に置かれた作物が低酸素ストレスにさらされ、作物の収量減少の一因となっています。
  • 公共データベース(公共DB)からシロイヌナズナ(植物研究の代表的なモデル生物)およびイネにおける低酸素ストレス処理での遺伝子発現解析実験データを取得し、研究室で開発した独自の手法により、多数の実験で共通して低酸素ストレスに応答する遺伝子を発見しました。
  • 発見した遺伝子群の中には、これまで植物の低酸素ストレス応答との関連が知られていない遺伝子も含まれており、今後より詳細な機能の解明が期待されます。

概要

  広島大学大学院統合生命科学研究科の田村啓太研究員と坊農秀雅特任教授は、公共データベース(公共DB)上の遺伝子発現解析実験データを統合的に再解析するメタ解析の手法を用いることによって、植物の低酸素ストレス応答に関与する新規候補遺伝子を発見しました。
 植物は、洪水などにより冠水状態に置かれると、酸素の取り込みが減少する低酸素ストレスにさらされることが知られており、植物研究の代表的なモデル生物であるシロイヌナズナや、日本人に身近なイネを中心に研究が行われてきました。低酸素ストレスに関与する遺伝子はすでに多数報告されておりますが、既存の知識によらないデータ駆動型の研究を行うことで、さらに未知の遺伝子が見つかるのではないかと考えました。
 当研究室では、公共DB上の遺伝子発現解析実験のデータを再解析するメタ解析の手法を開発しており、本研究にてシロイヌナズナとイネの低酸素ストレス処理のデータの再解析に適用することで、これまで低酸素ストレス応答との関連が知られていない新規候補遺伝子を同定しました。今回同定された候補遺伝子は、植物の低酸素ストレス応答の未知のメカニズムの解明につながるものと期待されます。
 本研究成果は、スイスの出版社Multidisciplinary Digital Publishing Institute (MDPI)のLife誌に2022年7月19日に掲載されました。

 

図1 シロイヌナズナとイネで共通して発現変動した遺伝子の数

図1 シロイヌナズナとイネで共通して発現変動した遺伝子の数
低酸素ストレス処理で発現が上昇した遺伝子数(左)および発現が低下した遺伝子数(右)。青色はシロイヌナズナ(At)の遺伝子数、赤色がイネ(Os)の遺伝子数で、重なった部分(発現上昇40遺伝子、発現低下19遺伝子)が共通して発現変動した遺伝子の数を表す。

論文情報

  • 著者:田村 啓太1)、坊農 秀雅2), * 
    1:大学院統合生命科学研究科・研究員
    2:大学院統合生命科学研究科・特任教授  
    * : Corresponding author(責任著者)
  • 論文題目:Meta-Analysis of RNA Sequencing Data of Arabidopsis and Rice under Hypoxia
  • 掲載雑誌:Life
  • DOI: https://doi.org/10.3390/life12071079
【お問い合わせ先】

<本研究に関すること>
 広島大学大学院統合生命科学研究科 特任教授 坊農秀雅
 Tel:082-424-4013
 E-mail:bonohu*hiroshima-u.ac.jp

<報道に関すること>広島大学広報室 
 Tel:082-424-4383
 Email:koho*office.hiroshima-u.ac.jp

 (注: *は半角@に置き換えてください)


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