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広島大学の「持続可能性に寄与するキラルノット超物質拠点」が 文部科学省の令和4年度世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択されました

 広島大学の「持続可能性に寄与するキラルノット超物質拠点(International Institute for Sustainability with Knotted Chiral Meta Matter, 以下SKCM2)」が10月13日に、文部科学省の令和4年度世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の新規採択拠点として決定されました。このプログラムは、“世界から目に見える”きわめて高い研究水準を誇る研究拠点の形成を目的とし、そのための大学・研究機関の自主的なシステム改革等を強力に支援するものです。中四国地域の大学および研究機関で初めての採択となります。

 拠点名にあるキラルとは、右手と左手の関係のように鏡像が互いに重ならない物質の状態を意味します。 地球上の生命を構成しているアミノ酸のほとんどは、左手型のキラル分子ですが、生命がどのようにして片方のキラル分子を選択したのかはわかっていません。SKCM2では、このような片方に偏る性質を模擬した結び目をもつ、キラルノット物質を創り、その構造が生じる原因とその性質を明らかにします。また、その研究成果をもとに、生命と素粒子・宇宙のキラリティ(対掌性)の偏りの起源に挑みます。この壮大な自然科学のテーマについて、数学、物理学、化学、生物学、材料科学、宇宙・惑星科学などの多様な分野の研究者が取り組み、キラリティが支配する自然の摂理を明らかにする新たな学術分野「キラルノット超物質創成学」を確立します。ここでの成果は、エネルギー・資源の枯渇、難治性の疾患など、多くの問題を解決するグリーンテクノロジーや医療イノベーションの創出に貢献します。

 SKCM2の拠点長であるIvan Smalyukh(イワン・スマリュク)先生(広島大学コンサルタント・米国コロラド大学ボルダー校教授)は、米国ホワイトハウスの大統領キャリア賞をはじめ、多くの賞を受賞している材料研究の世界的リーダーです。彼は、これまでに、キラルノット超物質によって作成した超断熱材の開発(窓ガラスに用いる)に成功しており、この新材料を建物全体に広げていくことにより、快適な室内環境を保ち、全世界のエネルギー消費量の約40%を占める建築物の省エネへの貢献が可能になります。
 本拠点で実施する基礎研究は、増大するエネルギー需要の削減や、エネルギーを生成することによって引き起こされる気候変動の緩和といった、地球規模の大きな課題に対応する技術革新を促進します。また、キラルノット超物質の特性を自在にデザインする新技術を確立し、例えば、エネルギーロスゼロの情報伝送素子、高密度記憶素子などを開発します。さらに、アルツハイマー病などの疾患の原因と言われているタンパク質の誤った結び目構造を制御し、疾患の治療法の開発にも挑戦します。
 本拠点では、8名の広島大学の主任研究者に加え、英国ケンブリッジ大学、米国マサチューセッツ工科大学(M I T)、ドイツ・マックスプランク研究所などの世界トップクラスの研究機関から11名の主任研究者を招聘します。SKCM2に参画する若手研究者は、これらの世界水準の研究者・研究機関との共同研究の機会を得ることができます。
 このような拠点形成が可能となった背景には、副拠点長である井上克也教授(広島大学)が2015年から主導している日本学術振興会・研究拠点形成事業 (Core-to-Coreプログラム)「スピンキラリティを軸にした先端材料コンソーシアム」の成果があります。広島大学は、このプログラムの運営に成功した経験を活かしながら、SKCM2での若手研究者、女性研究者、外国人研究者の育成および登用に力を注ぎ、日本全体の教育・研究改革の起点である学術界の国際化とダイバーシティの推進を図っていきます。

越智光夫学長 コメント

 英国ケンブリッジ大学、米国マサチューセッツ工科大学(M I T)、ドイツ・マックスプランク研究所などから、数理生命科学やバイオサイエンス、理論物理学をはじめとする多様な分野の世界で活躍する優秀な研究者が本学に集結し、広島大学との共同研究を展開します。この研究活動を通じて、持続可能な社会を先導する科学と技術を創成する人材育成を広島大学で行い、その成果を世界に向けて積極的に発信していくことを期待しています。

【お問い合わせ先】
 広島大学 未来共創科学研究本部 研究戦略推進部門
 E-mail:ura*office.hiroshima-u.ac.jp (*は半角@に置き換えて送信してください。)


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