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【研究成果】地震空白域の男鹿半島沖に新たな海底活断層 ~マルチビーム海底地形データを用いた立体画像で認定~

研究成果のポイント

  • 日本海東縁中部を対象に詳細な海底地形データを作成した。
  • 海底地形から海底の活断層を認定する方法を提案、検証した。
  • この方法により、東北地方日本海沖の地震空白域に新たな海底活断層を認定した。

概要

 広島大学大学院人間社会科学研究科准教授の後藤秀昭(地理学)と岡山大学教授の隈元崇(サイスモテクトニクス)たちのグループは、詳細な海底地形データから3Dで地形を読み取る画像を作成し、海底活断層の位置形状を明らかにする方法を提案しました。
 また、その手法を用いて東北地方の日本海沖で検討したところ、過去200年間で地震空白域となっている男鹿半島沖に新たな海底活断層を認定しました(図1,図2)。この手法により、海底活断層の分布が網羅的に明らかにできるようになり、今後の地震や津波の発生予測や防災の基礎的な資料になるものと期待されます。

論文情報

  • 掲載雑誌:Geomorphology
  • 論文タイトル:Revealing the Distribution of Active Submarine Faults off the Coast of Oga Peninsula Using High-Resolution Stereoscopic Topographic Images
  • 著者:Hideaki Goto, Hikaru Moriki, Takashi Kumamoto, Takashi Nakata
    ※:責任著者:後藤秀昭
  • 掲載日:2022年12月1日(9月27日オンライン版掲載)
  • 掲載URL:https://doi.org/10.1016/j.geomorph.2022.108465

発表内容

【研究の背景】
 プレート収束帯に位置する日本列島周辺には多数の海底活断層が認定されており、列島の形成史の理解や、地震や津波の発生予測の基礎資料として利用されている。南海トラフ沿いなど、これらの海底活断層は、主に海底下の地層の様子を読み解き、その位置や形状が明らかにされてきた。海底下の地層の判読には、大規模な調査が必要であり、調査されている場所が限られていることや、適当な地層がない場合には地層のずれが観察できず、活断層の位置や形状に見落としや、問題があることが心配されてきた。
 近年、マルチビーム測深調査と呼ばれる詳細な海底地形データの取得方法が普及し、広い範囲で詳しく地形が観察できるようになった。本研究ではこれらの地形データを使用して、海底地形を3Dで詳細に判読できる画像を作成し、この画像を用いて海底活断層の分布を明らかにする研究を行った。

【研究成果の内容】
 過去10数年間に測深されてきた情報を収集し、これまでにない解像度で海底地形を表現できるデータを作成した。海洋開発研究機構(JAMSTEC)と海上保安庁が行ってきたマルチビーム測深調査のデータを収集、選別、解析して1.5秒間隔(約45m間隔)の海底地形データとした。これを3Dで観察できるアナグリフ画像(図3)にし、陸上の活断層を認定するのと同じ基準を使うことで、海底地形を変動地形学的に読み取ることができることを示した。
 アナグリフは,赤青メガネを通して3Dで認識できる画像で、統一した基準で広い範囲の地形を読み解き、活断層を認識するのに適している。陰影起伏図などの陰による地形表現では、光の当たり具合によって表現されない地形があった。また、3D表現としては鳥瞰図(海底地形を俯瞰した図は鯨瞰図,図2)が用いられることが多いが、斜めに見るため陰ができて見えない部分が生じ、一度に全体を統一して見ることができなかった。アナグリフによる地形表現はこれらの問題を全て解決しており、陸上の活断層判読で一般に用いられている地形実体視判読と同様に、海底活断層を認識可能なことが示された。

【今後の展開】
 今回提案した手法を用いて、首都圏近くの相模トラフや、近い将来発生が予想されている南海トラフの海底活断層について、その位置や形状を明らかにする研究に発展させている。2022年度からの科学研究費補助金による研究では、相模トラフを対象に情報の不足している場所で独自に測深調査を行い、首都圏直下で起こるプレート境界型地震について、より現実に近い断層モデルを提示する計画である。
 マルチビームによる海底地形データを用いた変動地形的な研究は始まったばかりであり、データも不足している。これまでの研究では知られていない海底活断層が日本列島周辺に分布している可能性があり、地震防災や津波防災の推進ためにも検討を続ける必要があると考えている。

図1 研究地域
Bの破線は過去200年の震源域を示す。本研究で命名した久六島南西沖断層は「空白域」にある。

【お問い合わせ先】

<研究に関すること>
 大学院人間社会科学研究科 准教授 後藤秀昭
 Tel:082-424-6658 FAX:082-424-0320
 E-mail:hgoto*hiroshima-u.ac.jp

 (注: *は半角@に置き換えてください)

 


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