大学院人間社会科学研究科 教育学プログラム 高等教育学コース
教育学習支援センター
高等教育研究開発センター
准教授 櫻井勇介
sakurai[at]hiroshima-u.ac.jp
(注: [at]は半角@に置き換えてください)
本学教育学習支援センター・高等教育研究開発センターの櫻井勇介准教授と大学院人間社会科学研究科・博士課程後期の猿田静木さんと程文娟さんからなる研究チームは、質問紙データと聞き取りデータを併用する混合研究法により、外国人研究者の知識・知的能力開発の実感を説明しうる要素を検証する研究を行いました。これまでの研究では、日本の機関に所属する外国人研究者の満足感や疎外感について明らかにされてきました。しかしながら、外国人研究者が、自身の専門性を高めるためにどのような経験をしているのかは明らかにされてきませんでした。本研究は、日本の機関に所属する外国人研究者が、高い専門性を有する研究者としてさらに飛躍するために、そして日本の大学がより一層国際化し、国籍を問わず研究者が集う機関として、どのような体制や支援を整えるべきか考えるための示唆を与えるものです。
日本の大学や研究機関に所属する300名を超える協力者から質問紙への回答を得ました。多変量解析の統計的手法を用い、職場環境における諸条件(「業務負荷の程度」、「学術的支援」、「同僚関係」、「心理的ストレス」)の中で、外国人研究者自身による同僚関係の評価の高低のみが、知識・知的能力の実感を最も高めうる要因として抽出されました。一方、44名の協力者からの聞き取りデータの探索的な分析を通して、「情報アクセス支援」「人的つながり」「情報源」が外国人研究者の知識・知的能力開発の実感のカギとなる要素として抽出されました。
本研究では、同僚との人的つながりが、外国人研究者の知識・知的能力開発の実感を最も説明するという結果が得られ、先行研究の報告を鑑みると、彼らの日本での疎外経験が、研究者、教育者としての能力開発に制限をもたらしうることが示唆されました。また、国内では疎外されていると言っても、本聞き取り調査では、多くの調査協力者が母国や国外の繋がりを頼り、自身の専門性を高めていると述べており、彼らは研究者、高度専門家として疎外されているわけではなく、むしろ「日本が世界の研究コミュニティーから疎外されている」という見方もできるのではないでしょうか。
本研究成果は、Wiley, Higher Education Quarterlyに2023年6月27日付で掲載されました。
外国人研究者の知識・知的開発
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准教授 櫻井勇介
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(注: [at]は半角@に置き換えてください)
掲載日 : 2023年07月04日
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