<研究に関すること>
大学院統合生命科学研究科 准教授 荒川賢治
Tel:082-424-7767
E-mail:karakawa*hiroshima-u.ac.jp
<報道に関すること>
広島大学 広報室
Tel:082-424-6762
Email:koho*office.hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)
広島大学大学院統合生命科学研究科(旧 大学院先端物質科学研究科)・広島大学健康長寿研究拠点の荒川賢治准教授の研究グループは、東邦大学薬学部の安齊洋次郎博士・福本敦博士の研究グループとの共同研究により、放線菌Streptomyces rpchei 7434AN4株の三重遺伝子変異株(KA57株)からアゾキシアルケン化合物KA57Aに加え、吸収極大の異なる2つのUV活性化合物KA57D1、KA57D2の蓄積を見いだしました。
KA57D1は、分子式C12H22N2O2をもつ新規ヒドラジドアルケン化合物
(Z)-N-acetyl-N’-(hex-1-en-1-yl)isobutylhydrazide、
KA57D2は、分子式C13H24N2O2をもつ新規ヒドラジドアルケン化合物
(Z)-N-acetyl-N’-(hex-1-en-1-yl)-2-methylbutanehydrazideと決定しました。
KA57A、KA57D1、KA57D2のα位窒素(Nα)の起源がいずれも異なり(セリン、バリン、イソロイシン)、窒素・窒素結合形成酵素の基質認識が寛容であることが強く示唆されました。このことより、本酵素が様々なアミノ酸などの窒素含有化合物を結合させることが期待でき、新たな窒素・窒素含有化合物の創成が期待できます。
本研究成果は、2023年8月25日にアメリカ化学会の学術誌「Journal of Natural Products」に掲載され、当該号の表紙に採用されました。
微生物は、抗生物質、抗がん剤、免疫抑制剤など顕著な生理活性を有する天然有機化合物を生産してきており、我々人類の健康長寿に多大な貢献をしてくれています。微生物の中でも「放線菌」とよばれる原核生物は、今までに見出された微生物由来の12,000種類を超える抗生物質の約7割を生産していると言われており、さらに2015年ノーベル生理学医学賞を受賞された北里大学・大村 智先生が開発された抗寄生虫薬エバーメクチンも放線菌由来の化合物です。以前、我々は放線菌Streptomyces rocheiの三重遺伝子変異株KA57株がアゾキシアルケン化合物KA57Aを生産することを報告しましたが、今回、本株の微量代謝産物の解析を行い、2つの新規ヒドラジド化合物を単離しました。
KA57株を培養したところ、アゾキシアルケン化合物KA57Aに加え、2つのUV活性化合物が検出できました。これら(KA57D1、KA57D2と命名)の極大吸収波長は218 nmであり、KA57Aが236 nmであったことを考慮すると、KA57Aと異なる分子団を持つことが示唆されました。KA57D1は分子式C12H22N2O2であり、二次元NMRによる構造解析を行ったところ、新規ヒドラジドアルケン化合物(Z)-N-acetyl-N’-(hex-1-en-1-yl)isobutylhydrazideと決定しました。一方、KA57D2は分子式C13H24N2O2であり、新規ヒドラジドアルケン化合物(Z)-N-acetyl-N’-(hex-1-en-1-yl)-2-methylbutanehydrazideと決定しました。KA57D1、KA57D2の生合成起源を明らかにするために、同位体標識化合物の取り込み実験を行ったところ、KA57D1のβ位窒素(Nβ)の起源はグルタミン酸、イソブチルアミド基はバリン由来であること、KA57D2の2-メチルブタンアミド基はイソロイシン由来であることを立証しました。KA57A、KA57D1、KA57D2はいずれも窒素・窒素結合を有しており、KA57A、KA57D1、KA57D2のα位窒素(Nα)の起源(セリン、バリン、イソロイシン)がいずれも異なる点を考慮すると、窒素・窒素結合形成酵素の基質認識が寛容であることが強く示唆されました。
本成果により、本菌の窒素・窒素結合形成酵素は少なくとも3つのアミノ酸を認識可能であることが分かりました。本酵素がこれら以外のアミノ酸を認識することで、新たな窒素・窒素含有化合物の創成が期待できます。
図 放線菌Streptomyces rochei KA57株の寒天上での生育およびアゾキシアルケン化合物KA57A、ヒドラジドアルケン化合物KA57D1、KA57D2の生合成起源
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掲載日 : 2023年11月10日
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