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【研究成果】生成AIの活用法:予後が見える医療画像生成 ~子宮頸がん患者における撮影レスな予後予測へ~

研究成果のポイント

* 近年開発が活発な生成AIですが、画像生成分野でも広く活用が進んでいます。近年では“フェイク画像“の技術が話題となっていますが、医療分野でもこの技術は注目されています。
* 我々の研究グループは、生成AIを医療画像生成に活用し、1種類のMRI画像を撮影するだけで複数種類の画像を生成可能なAIの開発に取り組みました。
* また、生成した画像が治療予後を推定可能な画像なのかを検証するため、治療前MRI画像を生成して子宮頸がん患者の治療効果を予測したところ、予測精度は90%となり、予後が見える画像の生成に成功しました。

概要

 広島大学大学院医系科学研究科 河原大輔助教、永田靖名誉教授らの研究グループは、医療に特化した生成AI技術を開発し、MRI画像生成を行い、数秒で生成した画像を使用して子宮頸がん患者の治療効果予測を高率に予測することに成功しました。
 本研究成果は、2023年2月2日に欧州科学誌「Biomedical Signal Processing and Control」オンライン版に掲載されました。

論文情報

論文タイトル
Usability of synthesized image for prediction model of recurrence after radiotherapy in locally advanced cervical cancer

著者
河原大輔a*, 好村尚記b,c, 村上悠d, 松浦貴明b,e, 永田靖a

a 広島大学病院放射線治療科
b 広島大学大学院医系科学研究科 放射線腫瘍学
c 国立病院機構呉医療センター
d がん研究センター有明病院
*  責任著者

掲載雑誌
Biomedical Signal Processing and Control 

DOI番号
10.1016

背景

 近年、生成AIの活用が期待されており、医療においても非常に注目を集めています。生成した医用画像について、これまでは生成した画像と生成対象となる目標画像の差分をとって評価するなど、画像全体評価のみ行われていました。しかし、これでは生成した画像が病変部分をどのように表現しているのか理解できず、医療現場で活用は見込めません。本研究では医用画像における迅速な画像生成モデルを構築し、生成した治療前画像を使用して放射線治療予後を予測可能か検証を行うことで病変部分の画像特徴が予後を表現できる特徴を持っているか検証を行いました。

研究成果の内容

 図2に入力画像、目標画像、生成画像を示します。目標画像に生成画像が非常に近いことが示されました。画像間の差分は0.013以内(従来は1以上)、相互情報量は1.5以上(従来は1.0程度)と高精度な画像生成精度でした。
 さらに、生成画像を使用して放射線治療後の局所制御予測を行うとT1強調画像で75%程度、T2強調画像で82%程度、T1とT2強調画像を組み合わせると90%以上の予測精度を示しました。これは生成画像が病変領域で目標画像と遜色なく、さらに予後が見える特徴を持った画像になっていることを示しています。

今後の展開

 本研究は生成AIの医療への活用が可能な予後が見える画像生成システムの開発に取り組みました。予後が見える生成AI技術の開発に成功しました。
 医用画像生成が実現できれば撮影の負担を低減でき、さらに複数の画像を生成し組み合わせることで高精度な予後予測が可能になります。また、今後は予後予測以外にも病変診断、治療計画などさまざまに活用が可能であり、シームレスかつ多様な医療貢献が期待できます。

参考資料

図1.予測モデル構築までの流れを示します。生成AI技術によるMRI画像生成を行い、さらに生成した画像を使用して予後予測を行うシステムになります。

図2.入力画像として特定のMRI画像、さらに生成AIにより生成した画像と目標となる画像。目標画像と生成画像が良好に一致していることがわかります。

図3.目標画像(Real)、生成画像(Generated)それぞれの予後予測結果(a)より、目標画像と遜色なく生成した画像も同等の予後予測精度を示しています。入力画像、生成画像を組み合わせた予後予測結果(b)より、予測精度はさらに改善し、90%以上の予後予測精度になりました。

【お問い合わせ先】

病院放射線部 助教 河原大輔
Tel:082-257-1545 FAX:082-257-1546
E-mail:daika99*hiroshima-u.ac.jp

 (注: *は半角@に置き換えてください)


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