大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
教授 灰野 岳晴(はいの たけはる)
Tel:082-424-7426
E-mail:haino*hiroshima-u.ac.jp
大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
准教授 関谷 亮(せきや りょう)
Tel:082-424-7403
E-mail:csekiya*hiroshima-u.ac.jp
(注: *は半角@に置き換えてください)
広島大学大学院先進理工系科学研究科の構造有機化学研究室(有村咲紀(博士前期課程2年)・松本育也(研究当時博士課程前期2年)・関谷亮(准教授)・灰野岳晴(教授)は、様々な有機置換基で修飾可能なナノグラフェン*1の特徴を生かすことで中間色発光が可能な複合材料を実現した。また、ナノグラフェンの凝集を利用することで、凝集誘起発光増幅(Aggregation Induced Emission Enhancement)*2による発光強度の増強が起こることを示した。本研究成果により、様々な中間色を単一構造体で再現できる複合材料の実現が期待される。
研究成果はWiley-VCHより出版されている「Angewandte Chemie - International Edition」(I.F.=16.6)に2024年1月23日にオンライン版が掲載された。
発光材料は様々な用途に用いられるため、現在盛んに研究がなされている。発光色は発光を担う発光性分子の電子構造に影響を受けるため、全ての発光色が容易に達成できるわけではない。例えば、紫色発光は大きなバンドギャップが必要であるため、炭素・水素・窒素などの典型元素からなる有機化合物で紫色発光を実現した例は極めて少ない。このような場合、青色発光や赤色発光などを混合することで紫色発光が再現される。単一構造体で紫色発光を含む中間色の発光を自在に再現できれば、発光材料の開発を大幅に短縮することが可能になる。
黒鉛からトップダウン法*3により得られるナノグラフェンは、エッジ部分にカルボン酸などの含酸素官能基を多数有する。そのため、複数の機能性有機置換基で修飾することで多様な機能を発現させることが可能である。この性質を利用して青色発光と赤色発光を示す有機置換基をナノグラフェンに一括導入することで紫色発光の再現を目指した(図1a)。その結果、360 nmの光で化学修飾したナノグラフェンを励起したところ、青色発光と赤色発光が同時に起こり、中間色である紫色発光を再現することができた(図1b)。さらに、ナノグラフェンに導入した青色発光と赤色発光の発光強度が励起光の波長と有機溶媒の種類に依存することを利用し、励起波長を変化させることで様々な色での発光を実現した(図1c)。興味深いことに、ナノグラフェンが凝集することで発光強度が増強するという凝集誘起発光増幅が起こることを突き止めた。この性質を利用することで、凝集状態でも発光性能の低下を抑えられることが期待される。実際に、ナノグラフェンをポリマー樹脂であるポリフッ化ビニリデン(PVDF)*4に分散させたところ、発光性能の低下を抑えつつ紫色に発光するフィルムの実現に成功した(図1d)。
図1.(a)ナノグラフェンの模式図 (b)ナノグラフェンの蛍光スペクトル。写真はジクロロメタン中で360nmの励起光の照射により紫色を示すナノグラフェン (c)励起光の制御により、様々な色で発光するナノグラフェン (d)紫色を示すPVDFフィルム中に分散させたナノグラフェン
今回の研究を応用することで、様々な中間色の発光を再現可能な炭素材料の開発に大きな弾みがつくことが期待できる。
*1 ナノグラフェン:直径20nm程度のグラフェンのフラグメントであり、炭素原子とエッジ部分の含酸素官能基からなる
*2 凝集誘起発光増幅:分子が凝集することで分子運動が抑制され、その結果発光強度が増加する現象
*3 トップダウン法:黒鉛やカーボンナノチューブなどを、例えば酸化分解することでナノグラフェンを得る方法
*4 ポリフッ化ビニリデン(PVDF):フッ素系の熱可塑性ポリマー樹脂の一つ
大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
教授 灰野 岳晴(はいの たけはる)
Tel:082-424-7426
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大学院先進理工系科学研究科化学プログラム
准教授 関谷 亮(せきや りょう)
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掲載日 : 2024年02月08日
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