• ホームHome
  • 【研究成果】自動測定機能を有する血球分析装置バーコードターミナルBT-50の性能評価-安定性・効率性の向上と作業負担の軽減を達成-

【研究成果】自動測定機能を有する血球分析装置バーコードターミナルBT-50の性能評価-安定性・効率性の向上と作業負担の軽減を達成-

本研究成果のポイント

  • 精度管理物質(※1)の白血球数、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット、血小板数、網状赤血球数の6項目について、BT-50による自動測定と手動測定を比較しました。
  • 従来の血球分析装置(※2)には、精度管理物質を保管する保冷機能や自動測定をスケジュール管理するシステムがありませんでした。
  • 自動測定により一部の項目で手動測定よりも安定した結果が得られました。
  • 多くの工程が自動化され、手作業が減少し、業務効率が向上しました。

 

概要

  • 広島大学病院診療支援部の田畠稔梨技師、広島大学病院検査部の茂久田翔准教授らの研究グループは、精度管理を自動で行う血球分析装置「バーコードターミナル(※3)BT-50」(写真1)の基本性能と導入後のワークフロー(※4)の変化を評価しました。
  • 精度管理とは、検査の正確性と精密性を確認するために行われる測定作業です。現在、多くの検査は自動化されていますが、精度管理は依然として手動で行われています。この手動作業はばらつきが多く、作業負荷も高いことが課題となっています。
  • 研究では、精度管理を自動で行うBT-50の性能を評価しました。測定のばらつきが減少し、手作業が削減され、ワークフローの効率が向上しました。

図1.バーコードターミナルBT-50
(Sysmex社製)
 

図2.当院検査室の検査装置
先頭にBT-50があり、血液中の細胞の種類や数を測定する装置などが連結しています。

背景

 近年、臨床検査の自動化は進展しており、多くの検査装置が販売されています。しかし、依然として手動で行われている作業も存在し、その一つが精度管理であり、人為的ミスや手動により時間がかかることが課題でした。BT-50は精度管理試料の保冷機能と自動測定スケジュール機能を持ち、精度管理の人為的ミスの削減を期待できる機器であると考えられますが、その性能について学術的に評価された報告はありませんでした。

研究成果の内容

  1. 用手法(※5)との比較
    BT-50は用手法と同等の精度を持ち、一部の項目ではばらつきが小さい結果を得ました。たとえば、精度管理物質Level1の血小板数については、用手法では9.33~10.30万/μLとなりCV%は5.37%でしたが、BT-50法では9.80~10.30万/μLとなりCV%では2.60%とばらつきが小さくなっていました(※6)。血小板などの血球は小さな粒子ですから、精度管理物質の混ぜ方や保冷から室温に出している時間によって少し変化をしてしまいます。BT-50では毎回同じ条件で測定できることでばらつきが小さくなると考えます。
  2. 保冷機能の評価
    BT-50の保冷機能により、精度管理物質の安定性が確認されました。
  3. ワークフローの効率化
    精度管理測定に関わる工程が、導入前はマニュアル工程が10工程、自動工程が2工程でしたが、導入後はマニュアル工程が1工程、自動工程が9工程となり、35分以上かかっていた操作がデータの確認だけで終わることができ、作業の効率が向上しました。また、スケジュール管理をすることで、ダウンタイム(※7)を減らすことができました。
     

今後の展開

 BT-50の自動測定機能により、精度管理の効率化と作業者の負担軽減が実現されました。広島大学病院では、今後も最新の医療機器の導入を継続し、より正確な検査結果を提供していく予定です。

論文情報

  • 掲載雑誌:Clinical Chemistry and Laboratory Medicine
  • 著者:Minori Tabata1.2、Rie Nakai3、 Kyoko Kajihara1.2、Hiromi Nakagawa1.2、Shinichi Yamasaki1.2、Fumiaki Hayashi3、Sho Mokuda1.*
    1)広島大学病院 検査部
    2)広島大学病院 診療支援部
    3)シスメックス株式会社 アプリケーションサポート部
    * Corresponding author(責任著者)
  • 論文題目:Performance evaluation and user experience of BT-50 Transportation Unit with automated and scheduled quality control measurements 
  • DOI:10.1515/cclm-2024-0220
  • 論文URL:https://www.degruyter.com/document/doi/10.1515/cclm-2024-0220/html (5月17日付けでオンライン掲載されました)
     

用語解説

(※1)精度管理物質:結果が分かっており装置が正しい結果を示すか確認する物質。
(※2)血球分析装置:血液中の白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、血小板数、白血球分画などの成分を分類して計測する装置。
(※3)バーコードターミナル:検体に貼られたバーコードを読み取り、検査用のパソコンへ情報を送信する装置。
(※4)ワークフロー:業務開始から完了までに必要な流れ。
(※5)用手法:手動で行う測定方法。
(※6)CV%:変動係数ともよばれ、ばらつきを評価する方法。数値が小さい方がばらつきは少ないことを表している。
(※7)常時使用することが期待される機器が止まっている時間。

【お問い合わせ先】

 広島大学病院 診療支援部 臨床検査部門
 Tel:082-257-5550


up