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【研究成果】都市インフラの老朽化:市街地の下水管の老朽化が雨水管への漏出を通して河川等の水質に影響を与えている可能性を発見

本研究成果のポイント

 老朽化した下水管を抱える市街地において、汚水管から生活排水が広範に漏出している可能性を発見しました。

概要

 広島大学大学院先進理工系科学研究科の尾崎則篤准教授、金田一智規教授、大橋晶良教授は、老朽化した下水管(汚水管)をもつ市街地で、雨水流出管でカフェインを検出することによって下水管からの漏出が雨水管の水質に影響を与えている可能性を見出しました。これは近年問題になっている下水管の老朽化が下流域の水質にすでに影響を与えている可能性を指摘するものです。
 本研究成果は2024年4月5日にEnvironmental Chemistry Lettersに掲載されました。

背景

 都市部では現在、生活排水と雨水排水を分離して設計されていますが(分流式下水道)、管路の老朽化により、雨水や地下水が家庭排水管に流入、逆に家庭排水が都市の水域に漏出する可能性があります。日本を含む先進国では、これらのインフラが50年以上使用されているため、老朽化と更新が重要な課題となりつつあります。
 排水管の漏水は、都市の地下水や地表水を汚染する可能性があり、その診断は難しいです。カメラによる直接観察、スポット漏水測定、管の状態監視、トレーサー試験などの方法が開発されていますが、漏水率の推定は大きく異なり、これは地下環境の空間的・時間的な変動が影響していると考えられ、これらの影響を広域に確認する研究や調査方法は十分に発展していません。

研究成果の内容

 我々は、比較的最近整備された市街地(10年程度)から40年以上経過した市街地まで、異なる5つ市街地の雨水流出管で、カフェイン、香料物質、多環芳香族炭化水素をトレーサーとしたモニタリングを行いました。そして、古い市街地になるほど、特にカフェインにおいて顕著な高濃度を見出しました。 40年以上経過した下水道区域のカフェイン濃度は、10年経過した下水道区域よりも少なくとも2桁高く、生活廃水の1~10%に相当する濃度に達し、汚水管の漏れが生じていることを強く示唆するものでした。 

今後の展開

 日本においては大都市、中小都市においても現在は下水道の整備がかなり進捗しています。分流式下水道においてももっとも初期に整備されたものはすでに50年ほど経過しており、老朽化が問題とされつつあります。しかし一方、それらが現時点ですでに潜在的に公共用水域に影響を与えているかもしれないと思われつつその影響は未知です。本手法を活かして、この見えにくい公共用水域への影響を明らかにしていきたいと考えています。

参考資料

カフェイン(右下)を含む複数のマーカーを用いて様々な市街地で雨水管の調査を行った(Districts A to F)。特に古い市街地(D, E, F)のうちD, Eで、カフェインの高値を見出した。一方ほかの生活排水起源マーカー、特に香料物質(OTNE, HHCB, AHTN;右上)D, E, Fすべて高かった。しかしFはカフェインにおいては低く、異なる理由によるものであることが見て取れる。

論文情報

  •  論文タイトル: High caffeine levels in old sewer system waters reveal domestic wastewater leakage
     著者:尾崎則篤※、金田一智規、大橋晶良 ※責任著者
     著者所属:広島大学大学院先進理工系科学研究科
  • 掲載雑誌:Environmental Chemistry Letters
  • DOI:https://doi.org/10.1007/s10311-024-01733-3
【お問い合わせ先】

 大学院先進理工系科学研究科 准教授 尾崎則篤
 Tel:082-424-7822 FAX:082-424-7822
 E-mail:ojaki*hiroshima-u.ac.jp
 (注: *は半角@に置き換えてください)


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